エネルギー政策のひずみ露呈

太陽光発電設備拡充で住民訴訟急増
日付: 2020年07月01日 00時00分

 脱原子力政策を掲げ、再生可能エネルギーによる電力供給を推進する文在寅政権だが、現在主軸となっている石炭火力・原子力発電を段階的に縮小し、風力・太陽光発電メインへと切り替えを図っていくなか、さまざまな問題が露呈してきている。

 「脱原発」政策を掲げる文在寅政権は先月、再生可能エネルギー発電設備を増強し、今年の15・8GWから2034年までに78・1GWまで拡大するという計画を発表した。
計画によると、再生可能エネルギーのうち90%以上は太陽光発電が充当される。そのため太陽光発電施設のさらなる普及が必要となる。
そんななか、全羅南道海南にあるソラシド太陽光発電団地(国内最大規模で発電容量98・397メガワット)が3月から商業運転を開始するなど、太陽光発電を新エネルギーの基幹とする政策が着々と進行している。
半面、拙速な太陽光発電の普及政策によってさまざまな問題が露呈してきている。
一つは、太陽光発電設備の設置に対して周辺住民との間でトラブルが生じ訴訟が急増していることだ。訴訟の多くは太陽光発電施設建設許可の取り消しを求めるもの。最高裁判所によると、14年に7件だった太陽光発電施設関連訴訟は17年に63件、18年には102件、昨年は229件まで増加した。
取り消しを求める理由は、(1)太陽光発電設備設置による景観の悪化(2)山崩れなどの災害誘発の危険性(3)太陽光発電設備洗浄時の地下水汚染などが多い。
訴訟件数が5年間で約30倍に増加したことを考えると、トラブル抑制のための対策を講じることは不可欠だが、文政権は訴訟問題の解決に乗り出すことなく、さらなる太陽光発電設備拡大のための規制緩和策を打ち出した。
文政権は、各自治体に対して、従来まで設けられていた隔離距離制限の緩和を求めた。緩和をすれば政府から自治体に対して支援金が支給される。
隔離距離制限とは、居住地と道路などと一定の距離を置いて太陽光発電設備を作るように規制するもの。太陽光発電が周辺の美観を損ねることなく、日常生活にも支障をきたすことのないよう配慮したものだ。 
韓国電力取引所と韓国エネルギー公団、自治法規情報システムによれば、太陽光発電施設について隔離距離制限を設けている地方自治体は先月末時点で123カ所。
文政権は、自治体が隔離距離制限を緩和することを条件に(1)3億~18億ウォンの普及支援金の支給(2)参加型発電所の普及のために865億ウォンの支援金の支給などを決定した。
景観破壊か開発かという問題は韓国だけではなく、世界的にも大きな課題となっている。一度破壊した自然は簡単には元に戻らないからだ。これらの問題を黙殺し、強引に太陽光発電設備の設置拡充を行う文政権のエネルギー政策を疑問視する声も多い。
もう一つの問題は、中国製太陽電池モジュールの韓国内のシェアが拡大していることだ。
韓国産業通商資源部によると、今年1~4月の中国製太陽電池モジュールの輸入額は1億1758万ドルで、前年同期に比べ42・6%も増加した。
韓国の原発産業は世界最高クラスの競争力・技術力を有するが、太陽電池産業の場合、中国や日本などと比べて技術力に差がある。特に中国製品は高性能で低価格であるため、世界的にも圧倒的なシェアを誇る。2019年の世界太陽光発電メーカーのシェアランキングをみると、1位から5位まですべて中国関連の企業が占める。
そのため、以前から中国製太陽電池モジュールが韓国市場にあふれることに懸念が示されてきたが、これが現実になりつつある。文政権は、中国製品の国内流入に対し、19年の太陽電池モジュール市場で韓国製品のシェアは78・7%と反論してきたが、今後は怪しくなってきた。
エネルギー産業は国家の基盤をなすものだ。国のエネルギー技術を他国に握られることはインフラはもちろん、安全保障の面からみても極めて危険といえるだろう。


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