内部危機を外へ向ける金正恩・与正体制

米・日・北・中から信用されない文在寅
日付: 2020年06月10日 00時00分

 平昌冬季オリンピック(2018年)を契機に「板門店宣言」から「9・19南北軍事合意書」まで党対党関係を誇示した文在寅政権と金正恩体制の関係が冷え込んだまま、文在寅の秋波にもかかわらず、険悪な局面を見せている。
背景は、当初から南北双方の関係発展には限界があるうえ、南北双方がそれぞれ周辺国のすべてから信頼を失ったからだ。
そもそも北側は、米国の制裁を突破する文政権の果敢な行動を期待したが、文政権が言葉だけで、韓米同盟の破棄に向けた実際的、決定的な措置を取らないことへの焦燥感と不満が澎湃していると見られる。
事態をさらに複雑にするのは、北側の深刻な危機・混乱だ。最近は金与正が兄の代わりに、労働党を掌握したような状況が演出されている。金与正は4日、労働新聞1面を通して対南談話を発表した。金与正が金正恩に代わって書類に署名しているという噂も広がった。
しかし、金与正の権力誇示のためか、経験不足からか、4日の党中央第1副部長名義の談話は、荒く攻撃的だった。自分が対南事業も管掌していることを誇示したようだが、対南挑発を予告した談話は、効果より副作用のほうが多いと思われる。
金与正は、今まで禁忌だった脱北者という用語を全住民が使うようにした。統戦部も前例のない代弁人談話を通じて文政権を罵倒した。各地で脱北者糾弾を競争させるようにしたのは、脱北者の対北ビラが金正恩・与正体制の弱点を攻撃し、携帯電話が普及したため人里離れたところに落ちてもビラの内容が全国に知られるようになるため、文政権に八つ当たりした模様と思われる。
北側はすでに開城工団の南北共同連絡事務所を事実上閉鎖したとみられる。18年9月に開設された共同連絡事務所は、8日から北側との連絡が遮断された。平壌側はすでに死文化した9・19南北軍事合意書も廃棄する段階に入ると予想される。
北側は、米国に対してはSLBMカードを使い、韓国に対しては軍事境界線を中心に緊張を高める挑発をするものと見られる。たとえば脱北者が送るビラを理由に南へ銃撃を加え、NLLで向かい合っている地域では、海岸砲を発射し、非武装地帯内のGPの撤去を中止するなどの挑発が予想される。
北側は、彼らの誘発により、南北間の合意を破棄しても、文在寅政権は合意の維持を望んでいるはずと考え、この「弱点」を悪用すると思われる。すでに形骸化した9・19軍事合意書を破棄する名分や契機を見つけようとすると予想される。
一方文在寅は、去る3年間、日本の対北圧迫を韓日葛藤に置換させることで、韓米関係をさらに悪化させた。


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