【映画】『暗数殺人』(韓国) 連続殺人に潜む現代社会の闇

日付: 2020年03月25日 00時00分

2人の演技力が緊迫感をかもし出す©2018 SHOWBOX, FILM295 AND BLOSSOM PICTURES ALL RIGHTS RESERVED.
 韓国で実際に起きた連続殺人事件をモチーフにしたクライム・サスペンス。
ある日キム・ヒョンミン刑事は、恋人を殺害し逮捕された男カン・テオから「俺が殺したのは全部で7人」との告白を受ける。しかし、テオの証言の他に一切証拠はない。警察内部でもテオの自白に関して、まともに相手をする者はいなかった。それでもヒョンミンは、直感的にテオの言葉が真実であると確信。上層部の反対を押し切り、捜査を進めていく。何度もテオを取り調べ、内容を徹底的に調べていくヒョンミン。そしてついに、テオの証言どおり白骨化した遺体が発見されるが、テオは突然「俺は死体を運んだだけだ」と今までの証言をくつがえす。そんなテオの言葉に翻弄されていくヒョンミン。果たして残る死体は存在するのか? テオの目的はいったい何なのか?全てを明らかにするため、ヒョンミンは残る死体の捜索を続けていく。
製作総指揮・脚本は『友へ チング』のクァク・キョンテク。監督はキム・テギュン。キャストは、静かな情熱と執念で真実に迫る刑事ヒョンミン役に『10人の泥棒たち』のキム・ユンソク。連続殺人を告白し、刑事を翻弄する謎めいた犯人テオ役に『神と共に』のチュ・ジフン。刑事と犯人という対照的な立場にいるふたりの俳優の演技が実に秀逸。作中はふたりの駆け引きが何度も繰り返されるが、彼らの演技が実にリアルで惹きつけられる。それが本作の最大の見どころともいえよう。
タイトルにある暗数とは、実際の数量と統計上あつかわれる数量との差。主に犯罪統計において、警察などの公的機関が認知している犯罪の件数と実社会で起きている件数との差を示す。それは被害者はいても死体がなく、申告も、捜査もなかった幽霊事件を意味する。
本作が犯罪映画として異色なのは、被害者に焦点を当てて事件を解決していくところ。連続殺人犯と事件を追う刑事というよくあるストーリーではあるが、暴力的表現がほとんどなく、作品は刑事と犯人によるやり取りが淡々と描かれている。だからこそ、緻密な脚本と演出と演技力が重要なのだが、本作が韓国で観客動員数400万人を超えているのも頷ける。そして、登場人物たちの行動の背景が見えた時、現代社会に潜む闇が浮き彫りになっていくのも実に興味深い。

(宋 莉淑 ソン・リスク/文筆家)

公開=4月3日(金)よりシネマート新宿ほか全国ロードショー。
公式HP=http://klockworx-asia.com/ansu/


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