【寄稿】韓国を選んだ辛格浩と北韓を選んだ全鎭植(2)

自由市場と起業家精神なくして企業は生き残れるか
日付: 2020年03月18日 00時00分

 1995年に亡くなった全鎭植会長の跡を引き継いだ2代目の全守烈社長は96年11月22日、『時事ジャーナル』とのインタビューで「自由人宣言」をしてから「韓国がすでに世界11位の経済大国になっており、日本の貿易相手国の5位なので、日本で起業をしながら韓国と交流できないというのは企業にとって大きな弱点と言わざるを得ない」と述べた。
全守烈社長一行は97年5月15日に韓国を訪問、約1週間滞在しながら食品と流通業分野で韓国の協力パートナーを探したという。しかし、さくらグループは、企業活動が不可能な泥沼に進んで入ってしまった企業の代表例として、世界企業の経営史に残るはずだ。
国家や企業という共同体が発展するためには、民主、平等、正義、公正、創意、革新などが必要だが、最も重要なのは自由である。
自由とは、他人の支配と外部からの抑圧、命令と干渉を受けずに、みずから自律的に考えて行動することだ。国家は個人の自由を優先し、派生する問題を補完的に解決する程度の役割に留まるべきだ。
天然資源の乏しい大韓民国は、起伏はあったが、自由民主主義と自由市場経済体制の枠組みの中で世界10位圏の経済大国に発展してきた。他方、北韓は、個人の自由が極度に制限される「首領唯一支配体制」の下、発展どころか桎梏から脱せずにいる。
自由が尊重される大韓民国では、辛格浩名誉会長の自律的で創意的な企業家精神は、花を咲かせて実を結ぶことができた。自由のない北韓社会で、全鎭植会長の自律と企業家精神が能力を発揮できなかったのは当然の帰結である。

◆サクラグループ、北韓との合営事業のため衰退

大韓民国の発展のためには、企業の創意的自律性をベースにした発展が重要だということは誰も否定できないだろう。しかし、2年8カ月前の2017年5月10日に発足した文在寅政府が最低賃金を引き上げ、週52時間に勤務時間を短縮、過重な税金、終わりの見えない大企業への規制と「改革」圧迫などで、企業の士気を挫き続け、企業の国際競争力を弱化させている。
文在寅政権がスタートしてから、政府から現金をもらう人々が、物凄く増え続けている。2020年の予算を増やして若者や老人など約1100万人に現金を配る「ばらまき福祉」は、事実上の有権者買収だ。
4月の総選挙を控えたいま、大韓民国が企業の創意と自律、企業家精神が政府の制限や干渉を受けたり、有権者である国民に現金をばらまくような国にならないようにするため、国民の知恵と勇気が必要だ。全世界が認めている大企業が、本社をニューヨークに、工場をベトナムに移転するというような噂も静めなければならない。
ロッテグループの辛格浩名誉会長の死去に際して、「自由のない北韓」を選択したさくらグループの全鎭植会長一家の興亡盛衰を見ながら、「夜明けの文明散歩」というブログに掲載されたコラムの結論に戻る。
「自由、自由市場と起業家精神なくして、企業は生き残れるか」(終)

関連:http://news.onekoreanews.net/detail.php?number=87140&thread=02r02

宋鍾奐(ソン・ジョンファン)
『未来韓国』の発行人、元駐パキスタン大使、元駐国連・駐米大使館公使、元国家安全企画部海外情報室長、1970年代に南北対話に参加。 


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