駐韓米軍司令官「北韓軍の封鎖はコロナが原因」

感染者ゼロの可能性「ゼロ」 
日付: 2020年03月18日 00時00分

平壌周辺で拡大か、非常事態も

 現在、北韓には「武漢コロナウイルス」の感染者がどのくらいいるのだろうか。北韓政権は、新型コロナウイルスの発症者はいないというスタンスを通している。各公営メディアも「我が国には(ウイルスは)入ってきていない」(労働新聞、朝鮮中央通信、3・13)と主張している。
しかし、北韓の主張を額面通り受けとることは難しい。ロバート・エイブラムス駐韓米軍司令官が最近、こうした北韓の主張に反駁した。北韓軍が冬季軍事訓練を再開する前、1カ月間封鎖状態だったという指摘だ。
エイブラムス司令官は13日、米国国防部の番記者たちと行った映像記者会見で「北韓軍はこの24日間、軍用機を飛ばすこともできず、最近ようやく訓練用飛行を再開した。北韓当局は武漢コロナウイルス感染者は皆無だと主張しているが、私は感染者がいるものと確信している」と語った。北韓軍の動向に明るい駐韓米軍高位指揮官による公の発言だったことから、根拠のある分析とみられる。
北韓の武漢コロナウイルス事情は、正確には明かされていない。北韓メディアの報道では、外国人らの隔離に徹しているようにみえる。13日付の朝鮮中央通信は「隔離されていた外国人らと外国に出張した人、接触者などの医学的監視対象者に対する解除が中央非常防疫指揮部の統一的な指示に従い執行されている」とし、平安南北道で同日1710人が隔離解除されたことを明かした。13日までの北韓メディア報道をベースに分析すると、隔離された人は約1万人で、このうち約5600人が隔離解除された。
しかし、韓国のように全国的なデータを公開していないため、実際の状況は「五里霧中」だ。金正恩が半月近く平壌に戻らないことから、平壌一帯の武漢コロナウイルス感染状況は深刻なのではないかという推測もある。
最近、金正恩が東部戦線を視察し、ミサイル発射実験を数回にわたって実施したのも、実は「新型コロナウイルス逃避行脚」であり、指令部を江原道元山に移したという説もある。
情報当局によると、金正恩が平壌に滞在していたのは2月28日までとみられる。この日に朝鮮労働党中央委員会政治局拡大会議を開催し、翌日の労働新聞は「金正恩が東部戦線部隊の合同打撃訓練を指導した」と報道した。その後、江原道元山(2日)、咸鏡南道善徳(9日)などを回りながら、3回の砲射撃訓練を視察した。似たような訓練を反復して視察していることから「武漢コロナウイルスの感染を避けるため平壌に戻らない」と指摘されている。
米国国務部のロバート・デストロ次官補は11日(現地時間)、北韓の新型コロナウイルス感染状況に関し「我々は北韓住民らを心配している。我々は(武漢コロナウイルスに)感染したすべての住民に慰労の気持ちを伝える」と述べた。デストロ次官補はさらに「北韓の一助となるよう努めており、(北韓に)支援を提供できるという意を伝えた」と説明した。
北韓の医療体制と防疫環境は、韓国と比較できないほど劣悪であることは常識だ。そのため、北韓は感染疾患に特に脆弱だ。2011年度の保健社会研究院の「北韓の伝染病」論文によると、北韓住民の死因として、呼吸器感染と寄生虫疾患で死亡した割合が32%に達した。
特に、北韓は武漢コロナウイルスの発生地である中国と国境線1400キロに接している。中国との人的交流も活発だ。感染症に脆弱で年間の結核患者が13万人(18年WTO報告書)に達する北韓で、武漢コロナウイルスの感染者が「ゼロ」である可能性は「ゼロ」だろう。
中国から帰ってきた武漢コロナウイルス患者が判明次第、処分され、また住民の取り締まりが強化されるなど、北韓地域が非常事態になっていることが様々なルートより伝わってきている。
(ソウル=李民晧)


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