【映画】『悪の偶像』(韓国)

対照的な2人の父親がたどりつく真実とは
日付: 2020年02月27日 00時00分

エリート政治家の選択は…©2019CJ CGV Co; Ltd; VILL LEE FILM,POLLUX BARUNSON INC PRODUCTION All Rights Reserved.

 あるひき逃げ事件をきっかけに、交錯していく加害者の父と被害者の父の運命をスリリングに描いたサスペンス・ノワール。
市議会議員ク・ミョンフェは、ある夜息子ヨハンが飲酒運転中に、人をひき殺してしまったことを知る。政治家生命の危機に直面したミョンフェは、密かに揉み消し工作を実行。ひき逃げ犯としてヨハンを自首させたうえで、イメージダウンを最小限にとどめるための記者会見を行う。ヨハンにひき殺された男性は、小さな工具店を営む金髪の中年ユ・ジュンシクのひとり息子プナンだった。
失意のどん底に突き落とされたジュンシクのもとへ謝罪に出向いたミョンフェは、そこで思いがけない事実を告げられる。プナンはリョナという嫁と新婚旅行を楽しんでいる最中に事故に遭い、なぜかリョナの消息が不明になっているというのだ。事実が明るみに出るのを恐れたミョンフェは、リョナを見つけ出そうとする。一方、プナンが宿泊していたホテルを訪ねたジュンシクは、失踪したリョナが妊娠していることを知る。今は亡き息子のためにも、ジュンシクはリョナを捜し出すと心に誓う。
かくして、消えた目撃者の行方を追うふたりの父親は、耐えがたい葛藤に胸を引き裂かれながら、後戻りできない罪の闇に足を踏み入れていく…。
監督は『ハン・ゴンジュ17歳の涙』に続き、本作が長編第2作となるイ・スジン。キャストは、加害者の父ク・ミョンフェ役に『シュリ』『ベルリン・ファイル』のハン・ソッキュ。被害者の父ユ・ジュンシク役に『オアシス』『力道山』のソル・ギョング。韓国を代表するふたりの演技派俳優が異なる境遇にある父親役を熱演。対照的ともいえるアプローチで迫真の演技を披露している。また、物語のカギを握る消えた目撃者リョナ役に、『哭声/コクソン』のチョン・ウヒ。繊細さと大胆さを併せ持ち、謎に満ちたキャラクターを演じきった。
ところで、本作の原題は『偶像』。偶像とは、信仰の対象となる像、あこがれや崇拝の対象となるものを意味する。映画に登場する人物たちは、常に選択の岐路に立たされ、何かを選ばなければならない。その原動力は、守りたいものや信じたいものといった自分の作り上げた偶像によるものだ。本作はどちらに転ぶかわからないというギリギリの危うさの中で、人間の誰もが持つ光と闇をしっかりと描いているところが実に魅力的であり、恐ろしくもある。

(宋 莉淑 ソン・リスク/文筆家)

公開=4月17日(金)よりシネマート新宿・心斎橋ほか全国順次公開。
公式HP=https://akuno-guzo.com/


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