大韓民国の建国史(180)朴正煕が蒔いた文明の種が韓国を技術先進国に

日付: 2020年01月22日 00時00分

 ある最高委員は、顔を紅潮しながら言った。
「5・16」革命の目的は、まさに今紹介した、技術開発計画のような、国家計画を作り、国家の発展を遂げようとすることです。本人は、この計画を革命政府の最優先事業として設定し推進することを強く主張します」

 この瞬間をきっかけに軍人集団が企業家たちに続いて、科学技術者たちを後押しすることになる。元々軍人たちは、科学技術に敏感であるしかない。武器の質が戦争で勝敗を左右するように、科学技術の支えのない経済開発は不可能であることを、朴正煕は分かった。彼は、科学技術者たちは政治力が弱いため権力者が後押ししなければ官僚たちに押されて思いを進めるのができないという現実も見抜いた。朴正煕は、科学者たちの心強い後援者となる。

 軍事革命後のこの場面が、その後、韓国をどう変えただろうか。朴正煕大統領は1967年3月、科学技術処を発足させる。朴大統領の執念の産物であるこの科学技術処は、実は韓国軍のベトナム戦争派兵の産物でもある。朴正煕大統領とリンドン・ジョンソン米大統領は、65年5月18日「韓国の工業技術および応用科学研究所設立に関する韓米両国大統領の共同声明」を発表する。これは韓国軍のベトナム戦争参戦に対する、ジョンソン大統領が同盟国としての責務を果たしてくれた韓国への贈り物だったのだ。当時、ジョンソン大統領が、朴大統領に参戦の決断に対して何かプレゼントをしたいとの意向を伝えるや、朴大統領は、科学技術研究所(KIST)の設立を要請したのだ。

 近代化に向けての朴正煕の執念は、一世代が経つ前に、その結実を収穫し始める。韓国は2019年、国連開発機構(UNDP)が毎年発表するHDI(人間開発指数)のランキングで、イスラエルと共同で「世界22位」だ。HDIは、一国の開発レベルを評価するためUNDPが考案した指標で、過去の経済開発指数に、平均寿命、雇用、教育、健康、環境などの要素を加えた指数として「人間らしい生」を示す尺度に使われる。韓国は世界6位の輸出国(18年)、世界7位の貿易国(18年)、世界6位の原子力大国であり、米国当局が認めた唯一の次世代原子炉を設計した国家だ。韓国の総合的工業力は、世界5~6位圏に評価される。

 5・16軍事革命は、軍人、企業家、科学技術者たちを歴史の主役として登場させた。軍人と企業と科学技術者が組んで、「自主的な開放政策」で大企業を作り、先頭で国民を引っ張った。歴史的、文化的な土壌から見れば到底、大企業が作れない韓国で、世界的な大企業が生まれた。朝鮮王朝の士農工商の身分差別職業の差別がひどかった韓国で、これは一種の階級革命だった。朴正煕は、近代化革命の核心は「士農工商」を「商工農士」に変えることだと主張した。企業家と技術者が、両班と士の気質が強い守旧的な士(政治家、学者、言論人など)を押さえ、新しい歴史創造の主人公になるべきと力説した。石工出身の労働者が大企業群の創業者となり、大企業の専門経営者が大統領に選ばれた。その間、北韓は野蛮な世襲独裁体制へと後退した。階級革命は、北韓では失敗し、韓国で成功した。

 大企業は、良い商品と多くの雇用を創出し、外貨をたくさん稼ぎ、税金を多く納め、科学技術を発展させ、地域社会に貢献する。一種の福祉機関でもある。大企業を作れる国なのか否かが、先進国と後進国を決める。(つづく)


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