北韓の人権侵害に対し、文在寅政権は傍観と沈黙から「完全無視」へと切り替えた。国際社会の動きとは正反対だ。韓国は、国連に加盟する約60カ国が合意採択した北韓人権決議案に賛同しなかった。自由民主主義陣営国のうち、賛同しなかったのは韓国だけだった。同族である北韓住民問題に目をつぶるのは「恥」以外のなにものでもない。
国連は昨年12月18日(現地時間)、ニューヨーク本部で本会議を開き、北韓人権決議案をコンセンサスで採択した。コンセンサス方式は全員合意を基本とし、評決要請がない場合に適用される。決議案は「公開処刑と強制収容所の運営など、北韓政権が長期にわたって組織的かつ広範囲に行ってきた重大な人権侵害を即刻改善せよ」との内容だ。国連の対北人権決議案は2005年の採択以来、15年連続となった。
決議案は、北韓に人権侵害の即刻中止を訴求する一方、北韓の人権状況を国連安全保障理事会で国際刑事裁判所(ICC)に回付することを勧告した。今回の決議案における注目点は、「最も責任ある者」に対して適切な措置を勧告したことだ。名前こそ挙げなかったものの、反人道的犯罪の「最も責任ある者」として金正恩を示唆した格好だ。
今回の決議案賛同国は、米国と日本、カナダ、豪州、欧州連合(EU)加盟国など約60カ国で、韓国と同盟を結ぶすべての国が該当する。韓国だけが北韓人権決議案の共同提案国に賛同しなかった。
北韓の金星国連北韓代表部大使は「敵対勢力による不公正な政治的陰謀」と反発したが、国際社会は北韓での反人道的犯罪が政権(国家的)レベルで行われており、その責任者が金正恩であることを指摘した。
文在寅政権は「人間ファースト」のスローガンを掲げ、国内的には声高に人権擁護を叫びながらも、執権後は「北韓人権」問題の改善に向けた努力はゼロに等しい。韓国国会を通過した「北韓人権法」が施行されて3年が経過したが、今も関連財団すら設立されていない。また、北韓人権国際協力大使は、空席のまま2年4カ月が経過した。北韓人権記録保存所も、ほぼ活動していない状態だ。さらには、韓国への亡命を望んだ2人の脱北船員ですら北韓に追放し、各所に波紋を広げた。
韓国は2008年から、政権に関わらず北韓人権決議案共同提案国に賛同してきた。しかし、今回は離脱したにも関わらず、国民への報告や説明会、記者会見などは行わなかった。北韓の人権問題については、目と耳、口のすべてを閉ざした状態だ。
人権は人類にとって普遍的問題であり、人種・宗教・理念の違いを越える価値観だ。金正恩との対話に執着するあまり、同族である北韓住民の生命・安全に目をつぶるのは大韓民国政府としてあってはならないことだ。