【BOOK】「四隣人の食卓」ク・ビョンモ著/小山内園子訳

無理をして演じる理想の共同体 その実像があぶりだす結末とは
日付: 2019年11月20日 00時00分

 低出生率対策として国が整備した「夢未来実験共同住宅」は、首都圏まで車で30分以上の人里離れた山間部に建つ12戸のマンションだ。入居できるのは子どもが1人以上いる42歳未満の韓国籍の異性婚夫婦であり、入居後は10年以内に子どもを3人もうけなければならない。申請すれば体外受精のための不妊治療費も受給できるという徹底ぶりに笑ってしまいそうになるが、もしかしたら小説の中のことだけではなく、現実になるかもしれないと思い至り、何やら恐ろしく感じた。
マンションの裏庭には大人が16人ほども座れそうな、どっしりとした食卓が置かれている。物語は4組目の家族が入居し、その食卓で歓迎会が開かれる場面から始まる。今後の穏やかならざる展開を読者に予想させるに十分な状況であり、トラブルもいろいろと思い描くことができる。やがて、ぐいぐいと作品の世界へ引き込まれ、現実との境が曖昧になる。あまりにもリアルな心理描写のためか。
自分でも覆い隠している内面が、分子レベルに分解される気分だ。うまく保っているはずの社会性だが、他者に迎合できない感情が異物となって蓄積される。その結果はぜひ本書を手に取って確かめてもらいたい。
書肆侃侃房刊
1600円(税別)


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