キスン便り<第6回> 韓国企業が日本で成功できないわけ

日付: 2019年11月20日 00時00分

 私は、韓国から来た会社の顧問を何社か担当していたことがあります。今はもう、みんな失敗して撤退してしまいました。
日本でのビジネスがうまく行かないことに腹を立て、経営陣が大挙して日本にやって来たことがありました。日本で売れない理由が分からないのです。私は私なりの原因を説明し、撤退を勧めました。
日本で成功している韓国ビジネスには法則があります。それは辛ラーメンのパターンのみ成功しているということです。辛ラーメンは最終消費者に売って終わりです。アフターサービスも購買担当者との接触も必要ありません。サムソンのギャラクシーは、たまには修理サービスが必要かも知れませんが、基本的には売って終わりです。アフターサービスは必要ありません。これならば成功します。
私が担当していた会社はどれも製造業でした。韓国人の経営者は、日本人の社長を落とせば買って貰えると思っていますが、日本では購買担当者が購買稟議書を書かない限り、絶対に売れません。そして日本の社長は購買担当者の判断には口を挟まないのが普通です。トップダウンで何でも決めてしまう韓国とは違う点です。日本では性能が良くて安いというだけでは売れません。アメリカやヨーロッパで成功している会社でも、日本では信じられないぐらい物が売れなくて撤退していきました。
日本は減点文化です。自分に×点が付かないという確信が持てない限り、購買担当者は稟議書を書きません。稟議書が存在しない限り、日本では何事も始まりません。こういうことが韓国人には理解不能のようで、みんなやって来ては損を出して撤退です。
さて、そんな中、販売担当者の日本語に問題ありと感じたことが何度もあります。言葉としては通じるのですが、文化的な日本語となると水準以下という日本語しか使っていませんでした。
韓国では丁寧に受け答えするときには、返事を二度します。「イェー」ではなく「イェー、イェー」と返事をします。韓国語でこれをするのはもちろん問題ありませんが、日本語でこれをやると、相手をバカにしたことになります。「はい、はい」と日本語で二度返事をすると相手を軽んじていることになります。韓国のビジネスマンの中にはこれをやる人がちょくちょく居ます。これでは購買担当者は稟議書を書いてくれませんね。
それから日本語に慣れていない人は、日本語を言った後に「ヨ」をつけてしまいます。韓国語では語尾に「ヨ」をつけると丁寧語になります。で、韓国のビジネスマンは日本語で言って、「ヨ」をくっつけてしまうのです。日本語の「よ」はタメ口になることもあります。なおかつ、しつこいという印象を与えます。韓国語を知らない日本人は、韓国人はとにかくしつこい、とよく言いますが、それはこの「ヨ」の影響です。彼らが使う「ヨ」は日本語の「よ」ではないのです。しかし日本人はそんなことを知りませんから、「それでですよ」「製品がですよ」「大丈夫ですよ」などと言われると「しつこい野郎だなあ」となってしまうのです。
最後は「してあげる」です。韓国語で「へー、ドゥリゲッスムニダ」というのは丁寧な言い方ですが、これの日本語は「してあげる」ではありません。これは誤訳です。してあげる、と日本語でいうと恩着せがましい上から目線の言葉づかいになります。この言葉は「自分がします」と謙譲語に翻訳すべきです。最悪は「はい、はい。私がしてあげますヨ」などと言うことで、言われた日本人は「どうしてお前なんかに恩に着せられなきゃならないんだ」と切れちゃいますね。こんな日本語ではビジネスは壊れます。
李起昇 小説家、公認会計士。著書に、小説『チンダルレ』、古代史研究書『日本は韓国だったのか』(いずれもフィールドワイ刊)がある。


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