大韓民国の建国史(171)革命政府の経済開発戦略と李秉喆のビジョン

日付: 2019年10月17日 00時00分

 前回に続き、外資導入促進策の内容を紹介する。
(2)民間借款導入の際、政府が支払い保証をすること(3)民間経済外交を支援するため海外公館に商務官を駐在させること(4)民間企業が外国の技術者や企業家を自由に招待し工場建設などを協議できるよう許可すること(5)外資による工場を建設するとき、内資を最大限に融資する同時に後取担保制度をつくること(6)外資導入による機械を搬入するとき稼働に必要な原材料の輸入を可能にし、その販売代金で所要内資を充当する方策を講じること(7)外国の長期金融機関を誘致すること(8)外資導入促進法、外国為替管理法、二重課税防止条約などを推進すること。
朴議長は外資を導入する企業に破格的な恩恵を与えるこの提案を受け入れ法制化した。革命政府は1962年3月17日、輸出振興法など16の法令を公布した。外資導入による工業化、輸出入国の戦略の土台となった政府のこの支援は、漢江の奇跡を可能にしたが、同時に政経癒着を招いた。
企業人たちは、革命政府が農業優先の均衡成長政策を取らず工業と輸出中心の不均衡成長政策を取るようにすることにも影響を及ぼした。
李秉喆は朴正煕と政府要人らに「後進性から脱皮の近道は、工業化だけです。今、この時期を逃せば、経済開発はさらに遅れ貧困と混乱の悪循環から脱出できません」と強調した。李秉喆は62年初、韓国日報への寄稿でこのような要旨で主張した。
「我々は、英国の産業革命以前に戻って経済発展の古典的コースを歩む時間などない。私たちは、果敢にその順序を変えて工業化を先にし、大企業から出発して中小企業に降りていく方式をとるべきだ。農村の救済は、大胆な外資導入による工業化を通じて可能だ。外資導入は、米国を主力とし、賠償金問題のある日本、そしてドイツ、イタリア、フランス、オランダの順に重点をおくべきだ」
李秉喆は63年初にも韓国日報への寄稿文を通じて、重農政策ではなく、重工政策を推進すべき理由を預言的に説明した。
「私は1人当たりの国民所得を178ドル水準に引き上げるべきだと思う。これはフィリピンやトルコのレベルで、政府の計画よりは高い。今後10年間21億から23億ドルの外資導入が成功すれば、3年経ってもすでに建設した工場から収益が出る。その収益を毎年2億ドルと見ると、この資金を民間事業に再投資する場合、10年間、15億~20億ドルの工場建設資金を新たに確保することになる。40億ドルの投資をもって400万ドル規模の工場1000個を建てられる計算が成り立つ。投資総額の約70%に該当する28億ドルの年間生産の増加が可能で、したがって、1人当たり100ドルの国民所得の増加は無難に達成される。
これらの工場が平均500人ずつ雇用すれば、雇用増加は50万人、扶養家族を入れると250万人、下請の中小企業と流通段階での雇用を計算すれば、約500万人の雇用増大が期待できる。この数字ほど農村の人口を工業に吸収できるようになる。つまり、1500万の農民の3分の1を工業部門に吸収すれば、1人当たりの耕地面積420坪は630坪に増え、工業化によって肥料と農機具を安く供給できる。工場に賦課する税金も増え、公務員の給料も倍増できるため、不正腐敗も一掃できるようになり社会も明るく健全になる。全国民が貧困を追放してこそ反共体制が確立できる」
(つづく)


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