韓国スローフード探訪21 薬食同源は風土とともに

全州で知ったコンナムルクッパのパワー
日付: 2019年10月09日 00時00分

市場で山のように盛られた豆モヤシ
 韓国を訪れながら、いつも感心することのひとつにモヤシの使い方がある。特に、地方都市を訪れた時にその印象を強く感じた。
コンナムルクッパと言えば全州(全羅北道・全州市)。20年前の晩秋に、全州を初めて訪れた。当時は土地勘もなかったため、地元では誰もが知っているような規模の大きいホテルを利用した。フロントで日本語は通じなかったが英語は通じてホッとした矢先、「朝食は外で食べてください」と言われ「えッ!」と驚いた。が、これも面白いと思い「朝からやっている食堂を教えて欲しい」と伝えると「コンナムルクッパが有名だから」と店までの地図を書きながら、ニコニコした表情で「市場にはもっと旨い店があって」という。この言葉に「朝、市場までタクシーをお願いします」と即答。
翌朝、市内にある南部市場へ。コンナムル(豆モヤシ)クッ(汁)パ(ご飯)ということが頭から離れないせいか、市場に並んでいる山盛り状態のモヤシに目がいく。「これはすごい。こんなにモヤシを食べるの?」と不思議と驚きを抱えながら、教えてもらった一軒の食堂を目指した。市場で働く人の朝食時間帯なのだろうか混雑状態。待っていると、店の方が「どうぞ」と声をかけてくれた。席に着くや否や、沢山のモヤシとネギ、イカなどが入ったスープとご飯。そして替え玉ならぬ替えモヤシとキムチなどが出された。
食べ方は、スープにご飯を入れて食べている人の真似をした。「スープの旨さはどこからきているのだろう?」「モヤシがグッタリしていない?」「こんなに沢山、食べるの?」ご飯を混ぜたスープを口に運びながら、さまざまな驚きと疑問がわいてきた。「何故、豆モヤシなのだろう。そういえば、ビビンパプにも入っていた。そもそも豆モヤシを知ることからか」とあれこれ考えたが、スプーンを持つ手は一度も止まることがなかった。量の多さも感じない。何とも凄い食べ物だ。身体の隅々まで行き渡ったスープの力で眠っていた身体が動き出してきた。なんだか頭も徐々にシャッキとしてくるではないか。「モヤシスープ?」と思っていたが、いやいや奥が深い。
栄養豊富なコンナムルクッパ
 感心していると、店の人が「二日酔いにいいと昔からいわれているから」と。さらに続けて、牛骨から出汁をとっていることやイカの旨味をプラスし、塩だけで味を調えていることなどを教えてくれた。豆モヤシのシャキシャキ感は最後まで健在。さまざまな具材から出た旨みを吸収した豆モヤシを食べて、これまでのモヤシに対する概念が変わった。それまでは、豆モヤシとモヤシの区別もさほど気にしなかった。モヤシは野菜炒めやラーメンに入れる程度だった。
コンナムルクッパは、豆モヤシに含まれる大豆イソフラボン、ビタミンB・C、ミネラル分などの他、牛骨の出汁が基本となっていることでタンパク質も豊富。箸休めにいただくキムチは発酵食品とあって、さらに栄養価が高くなっている。二日酔いに良いとされるだけではなく、美容効果も高いのだ。
そろそろ、晩秋が近づいてきた。今年も全州コンナムルクッパの旅に出かけよう。真夏の気温と冷房で疲れた胃腸を、優しいスープで整えるために。
新見寿美江 編集者。著書に『韓国陶磁器めぐり』『韓国食めぐり』(JTB刊)などがある。


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