サムスン創業以来の危機

李副会長に実刑の可能性も
日付: 2019年09月11日 00時00分

 韓国経済を牽引してきたサムスングループが創業以来、最大の危機を迎えている。半導体マーケットの縮小などから急激に業績が悪化しているが、それに加え実質的な経営トップの李在鎔副会長が贈賄罪などに問われた裁判の2審判決が破棄され、差し戻し審で実刑となる可能性が高くなり、ここにきて「政治リスク」に直面している。

  大法院(最高裁)は8月29日、サムスン電子副会長・李在鎔被告の贈賄・横領容疑に対し、贈賄額を増やして再び審理すべきとし、2審の判決を破棄、差し戻した。この決定から李在鎔副会長が再び拘束される(実刑となる)可能性が高まり、サムスン電子の今後を懸念する声が高まっている。
最高裁は2審より賄賂額を大きく捉えており、李被告は差し戻し審で量刑がより重くなる可能性が高い。韓国では、賄賂の額が50億ウォン以上の場合は実刑が科されるケースが多い。
李副会長は、サムスン電子の躍進をリードしてきたカリスマ的存在。7月1日に日本政府が韓国に対して輸出規制の強化を決めると、いち早く日本へ渡り、キヤノンの御手洗会長と韓国ロッテグループ総帥の辛東彬会長と会談を持ったとされる。こういった行動力や人脈、経営手腕は経済界から高く評価されており、サムスンを世界有数の企業に育てたのも李副会長の手腕が大きいと見られている。同氏が現場で長期不在となると、求心力が失われる可能性が高い。
そうでなくとも、昨年からサムスンの経営環境の悪化は顕著だ。サムスン電子をとりまく事業環境は昨年から急激にかげり、悪化の一途をたどっている。
半導体市場の縮小から今年4~6月期決算は、純利益が前年同期比53%減の5兆1800億ウォンとなった。営業利益は同56%減の6兆6000億ウォン、売上高は同4%減の56兆1300億ウォンと大幅に後退している。
半導体マーケットの回復が見込まれないなか、米アップルは「iPhone」の画面に使う有機ELパネルについて、新たに中国製品の採用を検討していると報じられた。中国企業の製品開発力や質の向上は顕著で、半導体マーケットでの追い上げは激しい。iPhoneの上位機種に使われている有機ELパネルは現在、サムスンなどが供給しており、ライバルである中国企業の台頭を許せば、大きな損失につながることが簡単に予測できる。
また、サムスン電子だけではなく、サムスングループ主要3社がすべて不振であることも深刻な状況だ。サムスングループの事実上の持株会社であるサムスン物産も今年上半期の営業利益は前年比で45%減、金融グループを代表するサムスン生命も営業利益は半減した。
こういったなか、サムスンディスプレイは最近、大型ディスプレー事業部の職員を対象に希望退職者を募集しているという。対象は入社5年目以上の製造職と事務職で、希望退職者には業界平均以上の慰労金を支払う。サムスンディスプレイは最近、テレビ用液晶(LCD)パネルを月12万枚生産する忠清南道牙山事業場第8・5世代ラインでの減産を決めた。
「業績悪化、日本の輸出規制、米中貿易紛争の激化、中国企業の追い上げ」などのマイナス要因に加え、今回の裁判。
韓国経済の輸出の20%を占めるサムスングループの混乱は、韓国経済にとって大きな足かせになりかねない。
李副会長が関与した国政壟断事件から始まった検察の捜査は、(1)労使戦略文書(2)サムスンバイオ証拠隠滅(3)サムスン物産合併(4)経営権不正継承など、激しさを増しており、現政権が退陣しない限り、財閥をターゲットにした「政治的な追及」が沈静化する可能性は低いと見られている。


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