韓国スローフード探訪16 蕎麦の花咲く平昌郡蓬坪で蕎麦三昧

日付: 2019年06月26日 00時00分

新見工房代表 新見 寿美江

一面に咲く白い蕎麦の花
 韓国最大の山岳リゾート地として知られる江原道。東は海に面し、それに沿うように太白脈が南北に走り、奇岩や紅葉の美しさで知られる雪岳山をはじめ多くの山々が連なっている。平昌は冬季オリンピック開催地となったことで世界的にも知られる所となった。
平昌郡蓬坪は韓国一の蕎麦どころとして知られ、猛暑が終わり初秋を迎えるころ、蕎麦畑には可憐な白い花が咲き誇る。その美しさを地元の人たちは「塩を振りまいたようになる」と形容するほどだ。この時期に開催されるのが「平昌孝石文化祭り」。これは韓国の近代文学を代表する作家・李孝石の代表作『蕎麦の花咲く頃』に因んだもので、李孝石の生家や記念館、水車小屋、蕎麦郷土資料館などが蕎麦畑と共に李孝石文化村として整っている。
20年ほど前、この地を初めて訪れた時に特産品の蕎麦を食べてみようと飲食店に入った。スープがあるムルマッククスを注文した。蕎麦打ち名人でもいるのかと思い、厨房を見せて欲しいと伝え、中に入れてもらうことができた。そこには、日本では見たことがない機械が置かれてあった。こねた蕎麦粉を機械の筒状になったところに入れ押し出すとカットされている麺の状態になり、機械の下でグラグラと沸騰した大鍋の湯にストンと落ち、一瞬にして茹で上がり冷水に。まるでトコロテンのようだ。「きっと旨いはず」。そう思ったのは作り置きをしていないため蕎麦の香りが高かったからだ。以来、韓国で麺を食べる時は「メミルマッククス」がマイブームになって久しい。
蕎麦の花と蕎麦料理を目当てに6度目の蓬坪へ。訪れたのは9月上旬のこと。ようやく真っ白な花を見ることができた。さらに、嬉しいことに2と7の日に開かれる伝統市場にも行くことができた。豪雨や猛暑に見舞われたり、時期が遅かったりと、なかなか花の風景を見ることができなかった。
味も香りも堪能できるメミルマッククス
 伝統市場でも飲食ができるとあって蕎麦を出す店をあれこれ探し、つなぎなし10割蕎麦の店にたどり着いた。店内は、この店の蕎麦を目当てに遠方からやってきた人たちで賑わっている。
さっそく、ムルマッククスを注文した。何度か食べているこの地の10割蕎麦は、ボソボソ感をさほど感じない。さて、今回はどうだろう。「早い!」とにかく、待たせないのには驚く。先に麺を食べてみた。「これこれ。この食感。この味」、麺を噛むと鼻から蕎麦の香りが抜けていく。牛から取った出汁をベースにしたスープにキムチの酸味が加わり、蕎麦の風味にややピリ辛感と酸味が加わり、何とも食べやすい。想像したとおりの蕎麦を堪能することができた。
冷涼な気候でじっくりと育てられた蕎麦は何と言っても香りがいい。さらに、この地の蕎麦には通常より多いルチンが含まれていると言われている。
市場で見つけた蕎麦粉の生地にキムチを包んで焼いたメミルチョンピョンをおやつに買ってみた。本物の味を手軽に味わえる贅沢さも、また格別。暑い夏が終わったら今年も出かけよう。
新見寿美江 編集者。著書に『韓国陶磁器めぐり』『韓国食めぐり』(JTB刊)などがある。


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