1800年にわたる韓日交流史をたどる<第6回>

高麗神社訪問の意義とは
日付: 2019年04月24日 00時00分

韓国に関心を寄せ続けた今上天皇

 宮内庁は2017年9月、天皇陛下が高麗神社を訪問したことについて「私的旅行」であることを強調した。宮内庁の発表を額面通り受け取り、気候の良い秋の私的旅行と理解するのが正しいのだろうか。「日本の象徴」が、韓半島から来た渡来人の遺跡を訪ねるというのは何を意味するのだろうか。(ソウル=李民晧)

 韓国との歴史的絆に言及

韓国に関する天皇陛下の行脚について、日本のメディア報道は消極的だった。しかし、余波は小さくなかった。じわじわと広がった噂は、やがて日本社会にも広がった。日本人の中には「皇室の秘密が明らかになった」と語る人々も現れた。
天皇皇后両陛下の高麗神社来訪の新聞記事(2017年9月21日)
 これに韓国も反応した。政府の対外窓口である外交部が「歓迎声明」を発表し、主要メディアも「日本の天皇が高句麗遺跡を訪ねた」と報じた。
日本人が韓国人を誤解している点の一つは、天皇陛下を取り巻く批判問題だ。「韓半島支配の歴史の責任は天皇にある」という類の批判だ。
しかし、こうした韓国人の認識を掘り下げると、多くの韓国人は、天皇陛下個人に対してではなく、日本の天皇制に対して否定的な考えを持っているとみるべきだ。過去の日本の軍国主義者たちが天皇制を打ち出して韓半島を支配し、それが韓国人に甚大な苦痛と挫折を味あわせたという認識だ。
当時の昭和天皇が、軍国主義者らに利用されたかどうかはさておき、韓半島侵略にいかなる形でも責任があるという認識も依然として存在する。「先祖の過ちは子孫に引き継がれる」という韓国式の考えに基づけば、韓国人としては次期天皇に過ちをただすのは当たり前のことと感じるかもしれない。このような考え方の違いから、韓日の国民が天皇を巡り共感することも、互いの考えを理解することも難しいとみられる。
しかし、退位を控えた今上天皇の韓国に対する関心の高さは韓国でも知られるところだ。
2001年12月の「(8世紀に在位した)桓武天皇の生母は百済の武寧王の子孫」との発言や、05年にサイパンを訪問した際「韓国人犠牲者慰霊碑」を訪れた事実。そして17年9月に埼玉県日高市の高麗神社を訪問したことなど、「分かる人には分かる」と言って良いだろう。また、04年に旧皇族の朝香宮誠彦王が忠南・公州市の武寧王陵を訪問し、祭祀を行った事実を覚えている人も少なくない。韓国では、国粋主義に傾倒している日本社会に対し、天皇陛下が警鐘を鳴らす役割を担ったという評価が存在する。

韓流の火種をトーチへと変える力

一方で、政府による日本軽視の動きと、韓国メディアの微妙に歪んだ報道が止まないことも厳然たる事実だ。日本に関した記事はほとんどが否定的なものに絞られる傾向にある。
酷似した現象は日本のメディアにも見受けられる。韓国及び韓半島については、依然として妙なアレルギー反応が示されている。例えば、18年ロシア・ワールドカップサッカー大会の予選最終戦で、韓国がドイツを2対0で下した際「よくやった」とすればいいところを、一部メディアではあえて「韓国にしてはよくやった」などと表現した。
しかし、こうした韓日間の隙間を埋める存在として、天皇陛下はキーマンになり得るという見方が韓国には存在する。何よりも天皇陛下の行脚と発言は、日本社会を動かす巨大な力を持つからだ。
高麗神社の両陛下行幸の記念碑
 日本国憲法を見てみると、憲法第1条から8条までが天皇に関する規定が設けられている。第1条には「天皇は日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴」と記されている。
史上最悪ともいわれる現在の韓日関係を瞬時に解くことができる存在は天皇陛下しかいないかもしれない。日本社会において、天皇陛下に関することは徹底した「タブー」が作動する。陛下に対する批判などは行わないし、否定的な脈絡で話題にすることも少ない。
2000年代初頭に起きた韓流ブームも、天皇陛下を視野に入れて考えるとユニークな結論にたどり着くと見ている。一般的に言われている韓流ブームの始発点は、ヨン様(ペ・ヨンジュン)が主演したドラマ「冬のソナタ」だ。03年にNHKで放送されると、日本の中高年女性たちがヨン様の熱狂的ファンとなり、その流れが韓流を作ったとされている。
しかし、01年12月、もし天皇陛下が「韓国との縁を感じる」と話されなかったらどうなっていただろうか。日本人は、毛嫌いしていたニンニクの臭いを克服し、コチュカル(唐辛子粉)が入ったキムチを食べていただろうか。「冬のソナタ」が日本の公共放送の電波に乗ることができただろうか。
天皇陛下による「韓国に縁」と言及された時と、ヨン様ブームの時間差は、わずか1年数カ月だった。当時、天皇陛下は日本国民に向け「韓国と協力してワールドカップを滞りなく開催し、ワールドカップを日韓両国の理解と信頼を深めるきっかけにしてほしい」と語った。
陛下の記者会見は日本国民に投げかけた指針だ。信じようと信じまいと、小さい火種をトーチに変え、韓日間の距離を縮める大きな力になったと思われる。
そのため、韓国に対して関心を寄せ続けてきた今上天皇の退位は残念でならない。


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