大韓民国の建国史(147)韓日国交正常化に臨む朴正煕議長の基本的立場

日付: 2019年03月27日 00時00分

 鄭一永は朴正煕議長の質問に答えた。
「閣下、私たちが賠償金問題について具体的な理由を言いながら強く要求すれば、後に私たちが不利になります。総督府が発行した国債も南北韓が持っているためどれほどあるかもわれわれ自身が知らず、預金額も同様です。証拠不十分で、後にわれわれが主張する金額からその分が削られることになります」
「あ、そうだな」
「したがって、あまり具体的に話されず概略的にすればいいと思います。当然もらうべきものをもらうというふうに話されるのがいいかと思います」
「そう、それはわれわれが当然もらうべきもの、要求すべきことだと言えばいいな」
朴正熙はうなずき安心した表情だった。
11月12日(日曜日)の午前9時、迎賓館の玄関には韓日会談代表たちが出発の準備を終えて朴正煕議長を待っていた。警護を担当した崔英澤参事官が2階に上がってノックをして部屋に入った。スーツ姿で椅子に座って何か考えていた朴議長は、崔参事官を見た。
「出発の準備は終わったのか」
「はい、できました」
「随行する人々は?」
「はい、下のホールで待機しています」
「いつ出発するの」
「10分後に出発します」
朴議長は腕時計を見てからスーツのポケットから半分に折ったメモを取り出した。崔参事官が見たら、紙には縦に8行が書かれていた。会談のとき取り上げる主な議題と見えた。朴正熙は、自分がまとめたメモを静かに見ながら粛然たる姿勢で崔参事官に言った。
「私は会談の前に静かに頭の中を整理したい。一人で静かにいたいから、崔君は外で待ってくれ」
午前10時、池田総理の執務室に、池田総理と朴正煕議長、両国の実務代表たちが座った。韓国代表は柳陽洙最高会議外務国防委員長、崔德新外務長官、裵義煥韓日会談首席代表、鄭一永代表、元忠淵公報室長、崔英澤参事官が陪席し、日本側は小坂善太郞外相、伊関佑二郎外務省アジア局長、杉道助首席代表と前田利一北東アジア課長が陪席した。日本側の通訳だった前田課長(後に駐韓大使)は、仁川で生まれ小学校まで韓国で終えたが、韓国語が上手でなかったため、その場で鄭一永代表が両者の通訳を担当することになった。
両国の代表者が向かい合い挨拶を交わした直後、池田総理が朴議長に席を移すことを提案した。朴議長が応じ、二人は鄭一永代表を通訳として隣の部屋に移った。この日の会談は事実上、両首脳の単独会談で行われた。
池田総理は「本当によくいらっしゃいました。本当に嬉しいです。このように、私たちが会うべきだったのではありませんか」と言い出した。朴正煕も「私もお会いできて嬉しいです。米国大統領の招請で行くところに、杉代表が総理閣下の招待状を持ってきたのでこのように来ました。御招請ありがとうございます」と答えながら、 「今、外では実務会談が行われていますが、他のことはさておき、経済協力のために、私たちが日本側に支援して欲しいということではないという点を明白にしたいと思います。われわれは、日本側に請求すべきことが当然あるからです」と言った。
池田総理は終始、「あ、そうですか」「もちろん、そうすべきでしょう」と主に聞く姿勢をとった。そして漁業関係など懸案に対する韓国の立場を訊いた。 (つづく)


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