自らを破滅へ追い込んだ金正恩

中国の支援も期待できず
日付: 2019年03月13日 00時00分

主思派政権も自分の生存が優先

米朝ハノイ首脳会談に対する予測と対応の失敗で、金正恩の権威が決定的に揺らいでいる。北韓全域に不穏な空気が漂っている。米国の対北圧迫がさらに強化される中、金正恩は再び自力更生を強調し宣伝扇動に出た。金与正によって革命化教育を受け一線から退いた金己男(党宣伝扇動部の顧問)が「金正恩の書簡」を発表し再び前面に出た。ポスト金氏王朝への動きが点火するのか。

 まず、食糧不足による恐怖心が北韓全域に広がっている。ハノイから手ぶらで帰国した金正恩の権威が地に落ちた。当初、北側はハノイ会談を、従来のように米国が疲れるように段階的な遅延戦術を準備した。北側はハノイ会談を「非核化」ではなく、米朝間の核軍縮交渉にしようとした。
だが、それは大きな錯覚だった。社会主義との戦争を宣言したトランプ大統領に対し、核兵器を保有したまま社会主義体制を固守すると挑戦したのだ。トランプ大統領が完全非核化を目標に一括妥結を主張したことで、北側の戦略戦術は水の泡と消えた。米国は核兵器はもちろん、生物化学兵器まで廃棄を要求し、さらに人権問題を加えた。
金正恩は生存戦略を立て直す余裕もない。北側は東倉里のミサイル発射実験場を再整備するように演出するが、これは絶対通用しない。トランプ大統領は8日、ホワイトハウスで記者たちに、もし北側がミサイル試験を再開すれば(私は)大いに失望すると最後通告的な警告を発した。
これまで北側が米国を相手に遅延戦術を駆使できたのは、中国があったからだが、米中戦争によって、中国が北を支援する余裕がなくなった。金正恩は、米国に制裁の解除と支援を要求し、断られるや一転して自力更生を強調して出た。
金正恩は先週の6~7日、平壌で開かれた第2回全国党初級宣伝働き手大会へ送った「斬新な宣伝扇動で革命の前進動力を倍にして進もう」という書簡(9日報道)を通じ、「現在、わが党の思想事業で重要な課題の一つは、社会主義の経済建設を促すため宣伝・扇動の火力を集中すること」と強調した。ハノイ会談決別後の金正恩のメッセージは三つに要約される。
制裁解除が遠くなった現実をうけ、経済への総力路線を再確認した。「経済発展と人民生活の向上よりもっと切迫した革命任務はない」「全人民が白いご飯に肉のスープを食べ、絹の服を着て良い家に住むようにするのは、偉大な首領と将軍様の生涯の念願」と言った。また、「もし(首領の)偉大さを強調しようとして、首領の革命活動や風貌を神秘化すれば真実を覆うことになる」とし、「首領の無誤謬」を批判して民心を掴もうと試み、「非核化への長期戦」のため自力更生を強調した。
金正恩の書簡はA4用紙で12ページの冗長な内容だが、要約すれば社会主義体制を固守したまま核保有国の地位を得るということだ。
党の初級職員大会は各機関、工場、企業、協同農場などで一般住民に思想教育、宣伝扇動事業をする幹部組織だ。2001年4月26~27日、一度だけ開催された。
金正恩の失敗は自ら招いたものだ。金正恩体制は「家族経営体制」だ。金正日が三代権力世襲のため作った後継体制のための諸装置を、金正恩自身がすべて破壊した。恐怖統治と粛清で金正恩の周囲には頼れる側近が残っていない。
神的存在だった首領が、国政のあらゆる面で第一線に出た。自分だけでなく、首領の家族も前面に出た。妻や妹と一緒に、すべてのことを直接処理しなければならなくなった。
経験の浅い金氏王族が権力を行使することで、すべての失敗が金正恩一族の責任となる。金与正に革命化されて一線から退いた金己男が、全国党初級宣伝働き手大会で金正恩の書簡を伝える役割で一線に戻った。金与正が批判される番だ。
金正恩のハノイでの失敗はあまりにも致命的で、挽回は絶望的だ。中国の助けももはや期待できない。ソウルの文在寅・主思派も自らの生存が最優先だ。仮に、金正恩・習近平・文在寅が力を合わせても米国に太刀打ちできない。


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