昨年12月17日(ニューヨーク時間)、北韓の人権蹂躙を糾弾する国連人権決議案が採択され、北韓の実権を握る金正恩を示す文言が加わった。米国メディアは同日、「文政府は北韓人権に目をつぶっている」として韓国政府を批判した。文政権が対北経済協力に傾注する中、2014年に呉俊・前国連大使が行った演説が再び注目を集めている。(ソウル=李民晧)
再び注目浴びる前国連大使の演説
この日の国連総会では、北韓人権決議案が評決なくコンセンサス(全員合意)のもと採択された。2005年から14年連続となる。決議案は、名指しこそしなかったものの、「最も責任ある者」という誰もがそれと分かる表現を用い、金正恩に対する制裁を勧告した。
決議案の作成は、駐国連欧州連合(EU)と日本の代表管轄が主導し、韓国など61カ国が共同提案国として参加した。韓国政府は08年以降、11年連続で共同提案国として参加した。
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韓国語を混ぜ、北韓指導部にスピーチを行った呉俊前大使 |
一方で、韓国の現政府が北韓人権問題を軽視しているという批判は止まない。北韓人権決議案が採択されたこの日、ワシントンポスト(WP)は「韓国は北韓の建設ブームをイメージしているが、平壌は未だに強制労働部隊に依存している」というタイトルの記事を掲載。その中で「北韓の経済、特に建設産業は強制労働の上に成り立っている。数十年の間に数十万人もの男女、子どもが無報酬や無報酬に近い状態で(共生同労部隊)突撃隊という名のもと働くよう強要されている」と指摘した。続いて、突撃隊として働いた脱北者3人のインタビューも掲載。「労働者たちは栄養失調に苦しんでいる上、苛酷な冬にも作業服のまま臨時宿泊所で寝泊まりし、間に合わせの道具や素手で働いている」と報じた。
WPは「文大統領は北韓に対し、鉄道・道路連結建設事業推進を提示した。そして南北首脳会談には企業のトップらを引き連れ、国連制裁解除時に投資する用意があるとして金正恩を説得した。しかし、人権活動家たちは『文大統領の野心に満ちた計画は北韓の強制労働システムを弱化させたのだろうか』と疑問を提起している」と伝えた。
半面、北韓人権問題に対する政府の姿勢に対し、相反する過去の出来事もあった。14年12月22日、当時の呉俊・駐国連大使がニューヨークで開かれた国連安全保障理事会で行った演説だ。呉大使はこの日、韓国が国連安保理理事国としての任期を終える際に登壇し、北韓の人権改善を訴えた。
以下は、彼の発言の核心となる部分を要約したもので、世界各国の国連大使たちが感銘を受けた名演説として記憶されている。
「韓国が国連安保理会議に参加した2年前(12年)、初の案件は北韓の核ミサイル問題でした。当時と同じように、今日この『最後の案件』も北韓の人権について話しています。ただの偶然の一致でしょう。しかし、私の心はただ重いのです。なぜなら、大韓民国の人々にとって北韓住民は『ただの誰か(anybodies)』ではないからです。数百万人の家族が、未だに南北に分かれて暮らしています。彼らの声すら届かない冷たい現実を受け入れるべきですが…『我々は知っています』。たった数百キロメートルしか離れていない場所で我々の家族たちが生きているということをです。北韓人権調査委員会(COI)の報告書にあった人権侵害の惨状を思い出すと『我々の胸も引き裂かれます』。脱北者の証言を聞くと、まるで我々が悲劇に見舞われたかのように『共にそこに』いるような気分になります。遠いいつの日か、今日の我々を振り返ったときに、(北韓)住民のため『正しいことをした』と言えることを心から願います。我々と同じように人間らしく暮らす権利のある彼らのために」
呉大使は以上の演説を英語で行った。呉大使はスピーチの最後に韓国語を混ぜ、北韓指導部に対して呼びかけた。
「最後に、韓国人として北韓の指導者層にいくつか提言したく思います。韓国語でこう言います。『イジェ クマンハセヨ(もうやめてください)』。彼らに尋ねたいです。なぜ、あなた方はこうした(大量殺傷)兵器が必要なのですか?」
呉大使があえて韓国語で表現したのは、住民の人権を蹂躙する北韓指導者が最も理解しやすい言葉で表現したかったからだろう。