韓国自動車メーカー 半世紀超の挑戦―5―

「韓国車空白地」日本での再出発の可能性
日付: 2018年09月20日 00時00分

 先週の記事で、現代自動車の車が世界ラリー選手権(WRC)でポイントリーダーになっていることに触れた。韓国車がF1GPと並ぶ世界を代表するモータースポーツを制覇したら、韓国自動車産業始まって以来の快挙と言ってもいい。ビルボードのアルバム部門で1位になったBTS以上の快挙だ。
全13戦のうち9戦を終えた時点で現代自動車3勝、トヨタ3勝、フォード3勝の大接戦。第10戦が9月13~16日にトルコを舞台に終わったばかりだが、勝者はトヨタ。ポイントで逆転されたが、その差は本当にわずかだ。まだまだ再逆転が可能だ。
残るはあと3戦。イギリス(10月4~7日)、スペイン(10月25~28日)、オーストラリア(11月15~18日)と続く。
かつて日本のホンダがF1GPの活躍でブランドイメージを上げたように、WRCチャンピオンとなれば、現代自動車の車がもっと注目されるようになるに違いない。
さて、これまでの連載で韓国車の歴史をレポートしてきたが、たどってきた道は山あり谷ありとの印象だ。かつては純韓国の自動車メーカーは5グループ9社あったものが、現在は現代/起亜の1グループ2社になるなど、世界経済や韓国経済に翻弄されたり、たび重なるストライキや経営的失策でピンチに陥ったことも事実だ。
最近では、昨年の現代/起亜グループの中国販売が中韓関係の悪化により、前年比なんと28%減。主力の北米の販売でも、コスト面の競争力の低下で11%減と低迷。世界のメジャーメーカーのなかで一人負け。世界トータルで6・4%減となり、日本の報道機関は「韓国の自動車産業は危機的状況」と煽った。
今年に入り、同グループの世界販売は回復基調。1~8月で現代自
動車3・9%増、起亜自動車4・0%増、問題の中国市場での同時期の累計販売台数は60万台と、前年比20・1%増。失地を回復しつつある。
それにしても気になるのは、同グループの韓国国内シェア。このところのシェアは80%を完全に越えてしまっている。トヨタでも軽自動車を含めれば日本のシェアは30%台だ。
なぜか? これまで第3位メーカーだった韓国GMの販売不振が続き、4月には韓国市場撤退が報道されるほどの危機的状況になった。結局、群山工場の閉鎖を決断、経営合理化で撤退を否定したが、現在の販売状況を見ると予断を許さない。
今年8月の現代自動車の販売台数&シェアは5万8582台(シェア46・4%)、起亜自動車4万4200台(同35%)、合わせるとなんと81・4%だ。
それに続くのは雙龍9055台(同7・2%)、韓国GM7391台(同5・9%)、ルノー・サムソン7108台(同5・6%)。
市場規模からいえば、韓国に五つのメーカーは過多という声があるが、ライバルとなる第3、第4のメーカーが育ち、切磋琢磨することが健全な発展につながっていく。
韓国は貿易立国。欧米とFTA(自由貿易協定)を結び、自動車の関税を優遇している関係で、日本の5・9%よりはるかに多い15%もの外車販売比率となっている。この結果、2強以外の韓国メーカーの成長を妨げているとも思うのだが、そういう政策をとっているからには、輸入車との競争で韓国車の更なるレベルアップを図らねばならない。
韓国車はある時期”安さ”を武器に世界にアピールしてきたが、今やそれははるか昔の話となった。現代自動車社員の給与はトヨタやベンツより高額との話を聞いたことがある。コスト高が韓国車の新たな問題だ。
現代自動車は2001年から日本市場に進出したが、残念ながら09年に乗用車部門から撤退(現在はバスを販売、好調だ)。今から思うと時期尚早だったかもしれないが、韓国車のレベルが上がり、北米の高級車の分野で現代のジェネシスがトヨタのレクサスと並ぶ人気を得ていると聞くと、もう一度日本に!と思ったりする。
スタイル、クオリティはすでに日本車を超えているのだから、EVや燃料電池車(FCEV)で日本再進出も面白いと思うのだが。
(元講談社BC社長・『ベストカー』元編集長 勝股 優)


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