韓国自動車メーカー 半世紀超の挑戦―4―

モータースポーツでも飛躍!世界ラリー選手権をリード
日付: 2018年09月12日 00時00分

 韓国で自動車産業が本格的に始まったのは1962年。その後、急速に発展。75年には韓国オリジナルのヒュンダイポニーの生産が始まり、わずかの間に自動車大国となった。2010年には現代自動車/起亜自動車グループが世界4位の自動車生産メーカーになったことは、連載第3回で述べた。
自動車文化のひとつの象徴ともいえるモータースポーツの世界でも、いま偉業を達成しようとしている。
現代自動車はモータースポーツに積極的で、F1GPと並ぶ世界の代表的自動車競技、世界ラリー選手権(WRC)に00年から挑戦。最初のチャレンジは3年で終えたが、WRCを得意とする日本メーカーがリーマンショックなどの影響で撤退、復帰もままならないなかで、12年に復帰宣言、マシンを完成させ14年から再チャレンジを開始。その年の第9戦で初勝利を飾った。
16年には強豪VWに次ぐシーズンランキング2位を獲得。
そして今シーズンは絶好調。世界を転戦する全13戦のうち9戦を消化した時点でメイクス(メーカーの戦い)でトヨタ、フォード、シトロエンを抑えて首位。ドライバーズ(選手の戦い)でもベルギー人のヌービルが現代のマシンで圧倒的リード。使用しているマシンは、ファミリーカーのⅰ20をベースに304馬力の強力エンジンを搭載したモンスター4WD。迫力満点だ。
ラリーはサーキットを使うレースとは違って、公道を使用する競技。ナンバーもしっかり付いている。
トヨタは昨年からWRCに復帰したが、その理由を豊田章男社長は、「道路が車を鍛えてくれる。ラリーは公道を使う競技だから、あらゆる路面状況がある。市販車開発にとても有効な競技だ」と語っている。
現代自動車の思いも一緒だろう。WRC挑戦・制覇が現代自動車の車をさらに魅力的にするだろう。
来年秋には中部地方(愛知・岐阜)を舞台にWRCジャパンが開催されることが濃厚のため、現代自動車のラリーマシンがチャンピオンカーとして日本の公道を走ることになる。観戦が楽しみだ。
世界中を見渡しても、自国でオリジナルカーを作っている国はほんの一握り。韓国はそれを1975年に実現して、わずかの期間で世界に冠たる自動車大国となった。車作りを教えてくれたイギリスやイタリア、フランスを超えている。
43年の間に、世界はオイルショックや経済不況を何度か経験した。激しい労働争議も数多くあった。
なかでも、97年に韓国経済がIMFの救済にまで至った通貨危機は忘れられない。以後、自動車業界の構造変化は激しく97年には5グループ9社あった自動車メーカーはその後、三星がルノーに、雙龍がインドのマヒンドラに、大宇がGMと、外国資本に買収され、起亜自動車も経営危機で現代自動車傘下に入り現在に至っている。5グループあった純韓国企業がたった1グループに! まさに揺れ動いた韓国自動車業界だった。リーマンショックも韓国自動車メーカーに大きなダメージを与えたが、乗り切った。
また、米国向けの車のダンピング問題や燃費水増しといった疑惑が現代自動車に起こったのも事実だ。
最近では昨年の現代/起亜グループのグローバル販売が、中韓関係の悪化などの影響で前年比なんと28%減(韓国国内販売は8%減)と低迷、世界で一人負け。アメリカの販売でもコスト面による価格で競争力を失って11%減という状況になり、韓国の自動車産業は危機的状況と日本の報道機関はあおった。
今年になって同グループのグローバル販売は持ち直してきているが、5月の韓国内の販売シェアが80%を超えてしまっている。なぜか? これまで第3位メーカーだった韓国GMの販売不振が続き、5月には前年比35・3%減という大苦境に見舞われ、韓国市場撤退説も報道されるようになった。結局、群山工場の閉鎖を決断、撤退を否定したが、予断は許さない状況だ。
(元講談社BC社長・『ベストカー』元編集長 勝股 優)


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