韓国自動車メーカー 半世紀超の挑戦―3―

済州島の取り組みと最新燃料電池車への挑戦
日付: 2018年09月05日 00時00分

 韓国車の魅力はやはりデザインとインテリアのクオリティの高さだろう。韓国ではセダンが人気だが、日本のセダンのスタイルに比べると、月とスッポンくらいの差でリードしている。6月末に日本を代表するクラウンがモデルチェンジしたが、韓国車と比較して論じるのも可哀そう。日本ではさらにセダン離れに拍車がかかりそうだ。一時、現代自動車のデザインはホンダのコピーだと批判されたこともあるが、今や一切そんな話は聞かないし、個人的にはホンダが韓国車を真似する時代が来たと思うほどだ。
韓国メーカーは車をカッコよく造ることに貪欲だ。初代ヒュンダイポニーがイタルデザインの鬼才、ジウジアーロを起用して、いきなり世界の注目を集めたように、外部の才能ある人材を伝統的に使う。近年も、現代自動車はBMWのチーフデザイナーをヘッドハンティングしてデザインレベルを上げている。
現在、評価の高い起亜自動車のデザインだが、これもアウディのデザイン責任者だったP・シュライアーをヘッドハンティングし、デザインを一新した結果だ。その成功を受けてシュライアーは現代自動車/起亜自動車のデザインの最高責任者となり采配を振っている。同氏は起亜自動車の社長も兼任している。社長がデザイナーというのは世界を見渡しても見当たらない。現代/起亜グループのデザイン重視ぶりがわかる。
現在の起亜自動車の車のフロントグリル上下には特徴的な出っ張りがあるが、クルマ好きにはタイガーノーズグリルと呼ばれ、カッコ良さの象徴となっている。最新型の高級スポーツセダン、スティンガー(8とも呼ばれる)は365馬力の走りと官能的なスタイルにより、世界で大きく評価される存在だ。
日本車は、かつては現在の韓国車のように大物デザイナーを起用したが、今はそれもなく内向きだ。韓国車のデザインが無駄なラインがなく伸びやかで美しいのに対し、日本車は無駄なラインが多く、おかしい。スポーツの世界でも日本のチームユニフォームはデコレーション過多で変。車も同じような感じだと思う。
デザイン力では日本メーカーを圧倒的にリードする韓国車だが、日本の得意とする最新エコ技術の面でも引けをとらなくなっている。HVやPHEVは当然として、電気自動車(EV)の世界も充実している。EVは日本メーカーが先鞭をつけたものの、その歩みは長く停滞気味。今や現代/起亜/ルノーサムソンなどが積極展開している韓国の方が、選べる車種も多い。
取り組みは日本以上だ。本土もEVに積極的だが、済州島を例にとると、2030年までに島内の全車(50万台くらい)をEVにするという壮大なプロジェクトに取り組んでいることに驚く。フランスやイギリスが40年までに全車をEV化する計画を最近発表したが、済州島は5年も前から30年のEV化を目指して取り組んでいる。
島一周200キロメートルほどの済州島はEVの有効性をフルに発揮できる。必要な電力も風力発電でまかなう目標というから凄い。現時点でもすでに充電設備はビッシリ配備されている。
30年までにEVアイランド構想が実現するかどうかはわからないが、大きな目標をかかげ、熱く突き進むのが韓国人の特徴だ。
エコ最先端の燃料電池(FCV)の世界でも頑張っている。日本ではトヨタとホンダが市販(ホンダは法人販売のみ)を開始しているが、現代自動車も着々と開発を進め、すでに第3世代車まで開発。今秋、第4世代にあたるSUVベースの燃料電池車を発表・発売する予定だ。航続距離はなんと800キロメートルという。トヨタMIRAIが650キロメートルだから、これも優位に立つわけだ。
対するトヨタも負けじと、早急に航続距離を800キロメートルまで伸ばすと発表しており、世界をリードする日本・韓国の間で激しい競争が繰り広げられることは必至。この争いが、世界の車をさらに進化させる!
(元講談社BC社長・『ベストカー』元編集長 勝股 優)


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