労働新聞は7月中旬、文在寅を激しく非難した。「韓半島運転論は身の程知らずの虚慾」と罵った。「板門店でのショー」がもう利用価値がないと宣言したのだ。平壌がこういう行動をすると当惑感を感じるのは文在寅だけでない。
朝総連も当惑する。南北関係が順調に進んでいると思い、周りに宣伝してきたのに、一夜で、平壌の態度が変わったからだ。ところが、平壌の属性をよく分かっている人なら、これが文在寅一味に何かをもっと出すようにとの督促であることが分かる。
北韓だけでなく、朝総連もいま「共和国」創建70周年記念の準備に忙しい。金正恩も雨に濡れながら現地指導をし、強行軍する姿を演出する。もちろん、朝総連は忙しいふりをすることだけだ。ところが、過去70年間、金日成王朝が達成したことは何か。核兵器と首領を決死擁護するという矮小化した兵士と錆び付いた従来式に総爆弾の軍隊のほかに何が残っているか。
南北対決の73年後、北韓は結局、「有無相通すの精神」を掲げ、韓国を恐喝することだけが生きる道だと考える。労働党統戦部の李善権は先月、ソウルの統一部長官・趙明均に、大韓民国の国民年金の4分の1程度を出せと要求したと伝えられる。大韓民国国民の未来である年金基金をただでもらうという発想こそ「パルチザン式の有無相通す」だ。
文在寅政権が発足した後、予想通り、南北間の密輸が広範囲に行われた。北韓産の石炭密輸が発覚したのは氷山の一角だ。
金正恩は、核ミサイルを保有したまま、米国と修交し、米国など先進国から経済的支援を得ることができると考えている。つまり、金正日は中国とは軍事同盟関係を維持しながら、米国・日本などから経済支援を引き出せると考えている。
平壌側は、ソウルの青瓦台の主思派を自分たちの革命同志と思い、何でもできると考える。金正日と金正恩は金日成の遺訓である「有無相通じの精神」を10・4宣言と「4・27板門店宣言」に入れて南にこれを強いる。しかし、これは錯覚だ。韓国国民は、さらに主思派までも平壌のように生きたいと思わない。
金正恩は開城南北共同連絡事務所を韓国の収奪する装置にしようとする。だが、韓国人たちは平壌の収奪方式をよく知っている。それは朝総連の悲惨な経験を見たからだ。
朝総連は、日本で集めた財産をすべて平壌の首領に捧げたが、それは人民たちでなく、首領のためだけ使用された。共和国人口の1%に過ぎない在日朝総連が、1790年代末から、短期祖国訪問団をはじめ、1984年から合弁法に基づいて「愛国事業」で多くのお金と物資を首領に捧げたが、朝総連が得たのは勲章とメダルだけだ。
虚栄心の浮かれ平壌の首領たちに惜しい財産を献納し後悔した商工人は数えられない。朝総連商工連の副会長だった文秉彦もそういう一人だ。文秉彦は合弁法ができる前に、すでに恵山にアサヒビールの工場設備を献納した。年産5000トン規模の恵山秉彦ビール工場だ。恵山は北韓で唯一のホープの産地だ。それで北韓で一番うまいビールを生産したという。恵山には文秉彦の愛国行動を称える記念碑まで建てられた。
チェコ共和国で導入したホープ乾燥工場があり、乾燥させたホップを欧州にも輸出する。金日成が毎年夏に避暑地である三池淵に泊まるときは、首領のためのビールを供給した。もちろん、人民が飲むビールと首領が飲むビールは全く違う。首領のためのビールは、毎年春から特別に生産計画を策定する。
文秉彦ビール工場の設備を献納したのは、14歳のとき一人で北に送還された甥のビョンドンホを支配人とする条件だった。朝総連中央の管理対象だった文秉彦は、北韓に冷凍船の献納付した。平壌のゴルフ場も投資した。だが、支配人だったビョンドンホが死んだ後、子供たちはビール工場を相続できなかった。
商工人たちは結局、投資したお金をすべて奪われる。残るのは後悔、悔恨だけだ。北で今だ待遇されるのは、朝総連の幹部たちの子供たちだけだ。これが70年間「祖国」のため献身した在日同胞に対する平壌側の待遇だ。
朝総連学校は平壌に修学旅行に行く。平壌に行って何を見て学ぶのか。いわゆる人民共和国宣言の歌の一節という「ああ、自由朝鮮」というフレーズに閉口するしかない。首領の国で首領の外に自由な者がいるのか。首領は脳髄で、人民はただの肉に過ぎない。
いま朝総連は韓国も金正恩が支配する地獄にするつもりか。
(つづく)