四天王寺ワッソ【第2回】李熙健の開会宣言と趣旨

日本の教科書に渡来人の足跡記載
日付: 2018年08月29日 00時00分

華やかなパフォーマンスが行われるワッソ祭り(写真=中学校歴史資料大阪府)
 日本の中学校歴史資料―大阪府版(帝国書院刊)の「大阪の歴史」編には、大阪府各地に残る渡来人に由来した地名が記載されている。
大阪興銀のワッソ専門チームらは、企画の段階で2000ページを超える「日本書紀」などの歴史書を通読し、史学者らを訪ねた際にこの事実を知ったはずだ。中学校教科書の記載内容を抜粋すると次の通りだ。
”「四天王寺ワッソパレード」毎年11月に開催される祭りです。韓半島の百済、高句麗、新羅、伽耶など、東アジアの使節団を歓迎する様子を再現しています。難波宮跡公演では古代の衣装をまとった1000人近い人々が練り歩きます。「ワッソ」とは韓国語で「来た」という意味です”
続いて、教科書では大阪府管内の各地に残る渡来人に由来する地名を紹介している。例えば、大阪市南部の中通りの地名「心斎橋」は、かつては「新羅橋」だったということを明示している。また、現在もそのまま使用されている名前としては、百済駅(くだらえき)と高麗橋(こうらいばし)、八尾市の高麗寺と枚方市の百済王神社、百済寺跡などが挙げられている。
10代の青少年たちが学ぶ日本の歴史教科書にこうして韓半島から渡ってきた渡来人たち、韓日交流史の痕跡が記載されているというのは、日本の教育界では非常に珍しい現象だ。これは明らかに「ワッソ」祭りが導いてきた成果と言えるだろう。
日本社会で身をすくめて生きてきた在日韓国人たちにプライドを持たせ、韓半島にルーツがあることを堂々と言えるようにするという目的意識を持ち、実在した歴史的人物たちを再現したからだ。
しかし、いまだに同胞社会では自身の出自を隠そうとする意識があることも現実だ。代表的な分野は、スポーツ界と芸能界だ。韓国の血筋を持つ人は多いが、絶対的多数が純日本人として活動している。「私のルーツは韓国である」などと明かしたのは、格闘家の秋成勲(日本名:秋山)以外はゼロに近い。過去にはプロ野球・阪神タイガースのキャプテンが韓国系だという事実が明らかになった時は、到底笑えない寸劇も登場した。日本のメディアは「阪神のキャプテンがカミングアウトした」との表現を使った。性的少数者が本人の性的アイデンティティを公開するための用語が、ルーツの意識と直結する民族性の問題にすり替わってしまった。ワッソの発案者たちはワッソパレードを通し、同胞たちが韓国出身であることを隠さずに表現しよう、自然と日本人のふりをしている同胞社会の怠慢を正そうとした。
その根拠は、原点をたどることでわかる。1990年8月19日、ワッソの主導者かつ実行委員長である李熙健大阪興銀理事長は、開会宣言でワッソの趣旨を明確に表した。李熙健実行委員長はこの日、韓国と日本から来た数万人の来賓と観覧者たちが見守る中、メインステージである四天王寺(総本山四天王寺)の石舞台に上がり、次のようにスピーチした。
「2000年以上の長きにわたる韓日交流の歴史を見ますと、そこには様々な事情で韓半島から高度な文化技術、芸術などを携えた多くの人々が日本に渡来、定住し、絶えず日本列島に新たな活力を与えてきたという歴史があります。論語を携え、日本に漢字を伝えた王仁博士、仏教を初めて伝えた聖明王、古代日本を代表する知識人・聖徳太子、仏教の師である高句麗僧・恵慈、百済僧・恵総。このように、韓日両国は古代より深く融合し互いに影響を与えながら優雅で豊かな交流の歴史を築き上げたのであります。そして、このような歴史的遺産を受け継いだ私たちは、大阪の地に先人たちの輝かしい足跡を再現する四天王寺ワッソという新しい祭りを創生し、韓日両国の豊かな交流の歴史の正しい認識と21世紀を担う輝ける子どもたちに限りない夢とロマンを伝えていきたいと考えます。さらに、韓日両国に留まらず、東アジア全体の心的交流を象徴する大阪独自の祭りにしていくことを誓い、ここに四天王寺ワッソの開会を宣言いたします」(原文ママ) 
(李民晧ワッソ取材チーム長、つづく)


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