朝総連衰亡史(81)存亡の岐路に立った暴圧体制、金正恩は降伏するのか

日付: 2018年05月16日 00時00分

 朝総連は10日後に迫った全体大会を前に、「総連第24回全体大会を偉大な金正恩の時代、在日朝鮮人運動の新たな里程標を立てる輝かしい大会にしよう」と全組織に指示している。本当に情けないことだ。金正恩体制が生き残るかどうかわからない状況で無意味なスローガンだ。首領(金正恩)に付いて行くと言っているが、朝総連は1日の先が分からない状況に耐え難いはずだ。
米朝会談がシンガポールで開かれる予定だ。ところが、金正恩は非常に不安だ。当初はトランプ大統領を欺くことができると思ったが、特に時間が自分の方だと考えた金正恩は、段々自信を失っている。要するに、金正恩は、もし米国を騙せなくなれば、北韓住民を騙さねばならない。金正恩は、自分が死なないためには米国に降伏せねばならないからだ。
混乱に陥っている朝総連同胞たちのため、今、存亡の岐路に立っている北韓の立場を教えてあげたい。金正恩が「正常国家」の待遇を受けるため核を放棄する意思があると言うのは、そもそも米国の恐るべき軍事攻撃を一旦、避けながら時間を稼ぐためのものだった。
もちろん、現在の状況は一見、韓国と北韓と中国が共助して、米国の軍事力の行使をいったん阻止するのに成功しているかのように見える。ところで、米国は自国が北韓の核攻撃にさらされる状況を到底容認できない。しかも、平壌側はすでに中東地域へ核を移転(拡散)している。
北側が再び時間稼ぎの戦略を駆使することは、過去半世紀以上の経験から、誰もが分かっている。一体、金正恩の「非核化」云々の発言を信じる者いるだろうか。まず、金正恩自身が核兵器なしには今の体制を維持できないと思っている。金正恩が本当に核を完全に放棄するなら、それは自分の一族だけでも生きるため人民を捨てる時であるはずだ。
そのため金正恩は、過去20年以上効果をあげた戦術、つまり、任期が定められている指導者たちとの交渉では、時間を長引かせる戦術が有効であると信じている。特に今は、文在寅政権と中国が自分を応援しているためなおさらだ。さらに、金正恩はすでに米国が要求する「北核の廃棄」を、中国と文在寅の助けを得て「韓半島の非核化」にすり替えることにある程度に成功した。そして、核の廃棄を約束しても終戦宣言や平和協定を持ち出しながら、「段階的移行」を主張すればいくらでも時間を稼げると計算している。
もちろん、戦争の終結宣言や平和協定などが平和を保障できないことは、北側もよく知っている。協定や約束などを信じるなら、なぜ核ミサイルに執着してきだろうか。戦争の歴史は、信頼していない間で結ばれた不可侵条約こそ戦争への招待状であることを教えている。
でも、金正恩はやはり米国の軍事力が恐ろしい。昨年の11月、米国を攻撃することができる大陸間弾道弾の実験に成功したと誇るが、金正恩が恐れているのは、米国の軍事攻撃だ。米国の軍事力がいかに怖かったら少し歩くだけでも息切れする金正恩が板門店に現れ、北京に行き、米国務長官に会い、習近平に会うため大連まで飛んで行っただろうか。
核と経済の並進路線を誇っていた北側が、そして憲法に核保有国を明記していた北側が、いま「非核化」を米国に約束するしかなかったのは、米国との戦争は、確実な破滅を意味するからだ。だからこそ金正恩は体制の保証を前提に、今まで体制を保障してくれた核に加え、長距離ミサイルなど大量破壊兵器の全ての廃棄に仕方なく同意するしかなかった。
つい最近まで不倶戴天の敵として言ってきた米国との平和協定を云々し、妹の金与正と妻(李雪柱)までを外交に動員する、ぎこちない外交ごっこが平壤からの「分断と対決の支配戦略」の正体だ。
北韓内では、金正恩が部下たちや人民に今の不可避な事情を説明したという話も聞こえてくる。全知全能の首領が、金日成憲法に明示された、「朝鮮は核保有国である」ことを否定し、米国の圧力のために仕方なく、核を放棄すると発表せざるを得ないことを説明しているという。
いま、当初の予想より局面が深刻になりつつある。ポンペオ米国務長官は、金正恩を誘引するため、北韓版マーシャル・プランとも言える内容を発表(5月13日)した。北韓が核を完全に廃棄する場合、北韓住民も豊かな暮らしができるよう、大規模な支援を行う考えがあることを明らかにしたのだ。
(つづく)


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