金大植・汝矣島研究院院長インタビュー

今月中旬に洪準杓代表が訪日
日付: 2017年12月01日 00時00分

保守復活のキーワードは「現状認識と革新」

 野党第1党である自由韓国党傘下の汝矣島研究院は、韓国保守のシンクタンクを自任する。1995年に国内初の政党政策研究院として発足、研究所の理事長を務めるのは、同党の洪準杓代表だ。金泳三、李明博、朴槿惠という3人の大統領の誕生にもかかわった研究所で、7月から院長を務めている金大植氏に、最新の動向を聞いた。(ソウル=李民晧)

「保守復活を」と語る金院長(左)
 ――保守政党として、もっとも困難な状況に直面している。研究所として、今できることは何か。
「私は第20代の院長です。歴代院長の多くは、3期以上務めた国会議員や、長官経験者でした。重職を担うことに、責任を感じています。米国にはヘリテージ財団、ドイツにはアデナウアー財団、日本には松下政経塾がありますが、韓国には汝研があります。これまで多くの政策を生み出し、金泳三、李明博、朴槿惠まで3人の大統領を誕生させることに貢献しました。しかし、保守政党のシンクタンクとしての役割を果たしてきたかについては、反省すべき点があります。今すべきことは、時代を超える政策空間を作ることです。情報化とIT技術の発達で、人間が疎外されている現象が見られます。どのような政策でも政治でも、人が行うことです。天下の人材を汝研に集め『保守シンクネット』を作りたい。保守政党の価値を備え、そこに合った政策を実現したい」
 ――自由韓国党が保守のアイデンティティを失い、汝研も保守の理念シンクタンクとしての役割を果たせていないとの指摘があるが。
「保守の嫡統でありながら、これまでしっかり対応できなかったことを反省し、支持していただいている国民にひざまずいて向き合わなければなりません。”席膏待罪”の心で国民に近づき、許しを請いたいです。朴槿惠前大統領の弾劾以降『保守は壊滅した』と言っても過言ではありません。責任と犠牲が最優先にも関わらず、正直その点が不足していたと感じられます。私たちはまるで利益集団のようで、左派は理念集団です。自己犠牲の精神が、保守政治には必要です。国民の許しと支持を保つため、第一の前提は革新です。柳錫春革新委員長(延世大教授)とともに政策と組織、人事の三つの革新に拍車をかけます。変化の様子を、肌で感じています」
――議員116人を擁する巨大野党だが、政府与党の独走を許している。「韓国党では洪準杓代表の顔しか見えない」という批判もある。
「まだ自分たちが与党だと勘違いしている方がおられるようです。現実を直視できず、与党を相手に戦う意志が見えない時があります。なので洪代表が直接強気の発言をすることになる。振り返ってみると、人事聴聞会も選択と集中により、確実に落とす人物を決めれば目標を達成できたのに、そうできませんでした。韓国党はシベリアの原野に出てきたようなものですが、現状認識が大切です。幸いにも、韓国党は国民が何を望んでいるか知っており、急速に変化しています。支持者も徐々に増えています。独自の世論調査をみると、確かに変化が感じられます」
――文在寅大統領の支持率は高止まりしているが、保守層は公表されている世論調査結果を信じていないという。
「汝研の世論調査は、発表すると選挙法違反となるので明らかにできませんが、韓国党の支持率はかなり上昇曲線に乗っています。文大統領の支持率を評価するのは時期尚早だと思います。今はまさに組閣を完成したばかりで、ハネムーン期間中のようです。今年末を基点に、大統領の国政遂行支持率を綿密に分析しようと思います。洪準杓代表就任後の、代表と韓国党の支持率も予想よりも早く上昇しています」
――保守は高齢者に支えられているように見えるが、若年層を人材として取り込むために、どのような努力をしているのか。
「若者は李承晩と朴正熙をよく知らない。90年代に大統領を務めた金泳三さえも知らない。歴史を子孫に教えるのは、親世代の責務です。過去があるから現在と未来があり、社会が発展するには、それが共存していかなければならない。良い例があります。今年、朴正熙生誕100周年記念切手の発行が失敗に終わった時、大学生が自発的に切手を作る運動を展開し、大きな支持を集めました。功罪をファクトとして伝えれば、それは教科書になります。過去の悪い話だけをすれば、すべてが敵になりますが、将来の話をすれば、すべてが友人になりえます。研究所の主催で、建国の父・李承晩コンサート、産業化の英雄・朴正熙コンサート(大邱)、民主化の旗手・金泳三コンサート(釜山)を開催し、嫡統保守・韓国党のアイデンティティを明確にします。そして、もう一つ。韓国には約220校の4年制大学があります。大学ごとに少なくとも1人の青年政策諮問委員を委嘱するつもりです。さらに汝研青年政策センターを、若者の街である弘大エリアに移す計画もあります。若者なら誰でも議論し、政治家や既成世代とコミュニケーションできるようにするものです」
(洪準杓代表は11月29日、弘大前のカフェで若者たちと会い、2時間にわたって、テーマを決めずに話し合う場を持った)
――洪代表が12月に日本を訪問すると聞いたが。
「まだ日程は決まっていませんが、12月中旬に行くのは間違いない。日本のオピニオンリーダーに会い、北韓の核、安全保障問題の対策などを協議します。主要政党と日韓議員連盟などの政治指導者、民団をはじめとする同胞団体の指導者に会うつもりです。米国にも安全保障の話をしに訪問し、韓国の戦術核配備についての世論を伝え、米国議会の多数に賛成してもらえるよう協議しました。安保危機状況で、韓日米の同盟強化がこれまで以上に求められています。日本にも韓国のこうした事情を知ってもらい、同盟の共有を図りたい。安全保障は、生活上の問題ではなく、生きるか死ぬかの問題です」
――来年6月に地方選挙がある。保守は復活するのか。政権は、いわゆる積弊清算に力を注いでいるが、韓国党の策は。
「法治国家では、不正をすれば罰せられる。だが、政策的なミスを『積弊』として追及するのは間違っていると思います。歴代のどの政権にもミスはありました。すべてを積弊とすれば、反目と対立が深刻になるだけです。保守は崔順実事態の沼にはまり、困難な状況です。ビスマルクが言ったように、政治は可能性の芸術です。韓国党はより低い姿勢で国民に近づき、生活政治、国民の痒いところに手が届く政治をしようとしています。医療保険、脱原発の問題などで見られるように、保守右派は、正確なデータを提示し、どんな政策について何が良くなって何が悪くなったのか、ファクトを正確に知らせます。そして、安全保障を最優先します。政策は最後まで守り、批判は甘んじて受けます。116人の国会議員、253の党協委員長、300万の党員が、国の発展の一翼を担うために一つになるならば、そして『生きるか死ぬか』という危機感を抱いていれば、保守は確かに復活できると信じています」


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