人と今 李寶那さん(陶芸家)

追い求めるのは存在感を放つ白
日付: 2017年11月01日 00時00分

試行錯誤を重ねている
 都内で陶芸教室の講師を務める傍ら、創作活動にも取り組む。「陶芸家というと『好きなことを仕事にできていいね』といわれますけど、そんなことはないですよ。苦しいことばかりです」と話す。


本格的に陶芸に取り組み始めたのは、大学卒業後。グラフィックを学んでいたが、性に合わずに陶芸の道へ。父で画家の李禹煥氏がフランスで行った展示会に同行し、そこで出会った女性作家の下で修業を積むことになった。


師匠は変わった人だった。ある日ティーポットを作った時、注ぎ口につながる穴を入れ忘れた。それを指摘すると「花を生けたいと思う人がいるかもしれない」と言い放った。自治体からの注文を受けて陶器セットを作ったが、完成品はどう見ても不ぞろいだった。それでも「同じ形よ」と楽観的。「自由さに衝撃を受け、陶芸への固定観念が崩れた」と李さんは振り返る。


ヨーロッパでの生活は、自らのアイデンティティーを見つめなおすきっかけにもなった。「韓国人」と名乗っていても、韓国のことを知らず、言葉も話せない。ヨーロッパを離れ韓国に渡り、陶器に加えて磁器も学んだ。だからだろうか、李さんの作品は「形はアジアのもの、色はヨーロッパのもののよう」と評されることが少なくないという。


理想の器を追い求める。目指すは、存在感を放つ白。「本当に苦しい作業だけれど、私にはこれしかない」と、試行錯誤を重ねている。


閉じる