韓国政府が北韓に対して行った9億3200万ドルの借款が、返済されないままになっていることが明らかになった。自由韓国党の沈在哲議員が、国会予算政策処から「南北協力基金と対北借款問題の把握」という資料を受け取り、分析した結果だ。
沈議員によると、韓国政府は金大中政権時代に3億2700万ドル、盧武鉉政権時代に6億500万ドルの計9億3200万ドルを支援したが、一銭も返済されていないことが分かった。
韓国ウォンで1兆ウォンに達する巨額の借款は、6年前から返済が始まるはずだった。しかしこれまでのところ、北韓の現金償還額はゼロ。2007年から08年にかけて、亜鉛などの現物240万ドル相当が返ってきただけだ。今年7月末の時点で、延滞金は1614億ウォンに達している。
対北借款は2000年、金大中政権が南北交流・協力推進のため「南北間の食糧借款提供に関する合意書」を締結したことで始まったが、李明博政権に入って中止された。当時は、北韓軍人が金剛山を観光で訪れていた韓国人の朴王子さんを射殺する事件があり、南北関係が急激に冷え込んだ時期だった。
最近、文在寅政権が800万ドルの対北支援を決めたばかりだが、「なぜ今なのか」という批判にさらされることとなった。韓国国民の税金から出された対北借款が、たとえ「人道」目的であっても、実際には北韓政権の維持に利用されるということを再確認させる事例だ。
韓国政府は、借款管理業務を担当している韓国輸出入銀行を通じて、北韓に償還期日の案内を送り、四半期ごとに延滞金の返済を督促してきたという。しかし、答えが返ってくるどころか無視されているというのが、政府関係者の説明だ。
時期から見て、北韓への借款が、核・ミサイル開発に転用された可能性は排除できない。一方、文在寅政権は最近、来年度の南北協力基金として1兆462億ウォンを策定。そのうち「人道的次元」名目の無償支援事業費として2480億ウォンが計上されている。
(ソウル=李民晧)