韓国で新政権が発足して100日ほど経った今、韓米関係と韓米同盟が、北韓の核挑発によって惹起された韓半島の危機状況を乗り越えられるほど安定的かつ強固なものなのかに対する危惧が、高まりつつある。同盟を研究する専門家たちは、いかなる同盟でも普遍的に見られる二つの悩み、つまり放棄(abandonment)と陥穽(entrapment)について論じている。相対的に弱い同盟国は、強い国家が決定的な瞬間に自国を見放すかもしれないという不安があり、強い方は、弱い同盟国を助けようとして、自国が戦争に巻き込まれるかもしれないという不安がある。
北韓の核ミサイル開発計画は、韓米同盟はもちろん、前述したように同盟において一般的に見られる不安を正確に認識しており、ついに韓米同盟が揺さぶられる、決定的な契機を迎えている。米本土まで到達する北韓の核ミサイルは、米国には韓国を護ろうとして米本土が核攻撃されるかもしれないという不安を、韓国には米国が韓国を見放すかもしれないという不安を与えている。数十年以上、あらゆる難関を乗り越えて核開発に邁進してきた北韓の努力が、ついにその効果を発揮しているのだ。
金正日は金日成の存命中、すでに「首領様の代に祖国を統一するためには、米本土を攻撃できる能力を持たなければならない。そうしてこそ、安心して祖国統一の大事変を、主動的に迎えられる」と言った。そうすることで、北韓が核兵器体系を開発する戦略的な理由を明示したのだ。
金正日が優れた戦略家だったためそう考えたのではない。そう考えたのは、それが核戦略の基礎理論であるだけの話だ。
北韓の核ミサイルが米国本土に届くようになることの意味を正確に理解している米国は最近、北韓がICBMを発射するたびに、B1爆撃機を韓半島に出撃させ、米国の介入は「鉄壁のような公約」(Ironclad commitment)であることを知らせるためのものだと付言する。
ところが、韓国も韓米同盟を確固として維持するため積極的に努力しているかは不明だ。まず、北韓の核ミサイルを阻止しようとする国際社会の積極的な対北制裁の努力に、韓国が本当に積極的に参加しているのか、現政権の正確な意図ははっきりしていない。
北韓が、ICBMが本物であることを誇示した(7月4日)直後の6日、韓国政府はベルリン構想という発表を通して、北韓との対話に大きな期待を寄せた。果たして今が対話をすべき時期なのかという反問が現地で出たほどだ。
韓国政府は7月17日、北韓に対して南北赤十字会談と軍事会談の開催を提案した。北側が期限内に何も返答も出さないと、韓国政府当局は、先日の対話提案には定められた時限はないと言った。
韓国政府のこのような言動が、ティラーソン米国務長官の突出した発言を招いたのかもしれない。ティラーソン氏は8月1日、「米国は、北韓の政権交代を望んでいない」「北韓と向かいあって対話をしたい」「米国は北韓の敵ではない」「われわれは、韓半島の統一を促進する政策を追求しない」などと吐き出した。
韓米同盟が韓国の生存に重要だと強調する人々は、「対米事大主義者」と揶揄され、民族主義的でないと非難されているが、国際政治の現実を見れば、韓国は自力で生存と独立、主権を維持できる環境に置かれている国ではない。
大韓民国は、朝鮮王朝が滅亡した20世紀初頭とさほど変わらない北東アジアの国際体制の中で生きている「相対的な弱小国」だ。百年以上前の朝鮮王朝は、今のように「敵対的」に分断された状態でなかったことを勘案すれば、むしろ今の状態の方が悪い。ただ、当時とまったく違う点は、韓国は今、世界最強の超大国である米国の同盟国であるという事実だ。
ところで、韓国政府と国民は、韓米同盟の解体を追求してきた北韓に対応できるよう、同盟を維持する努力をしているのか。北韓は今まで、米国さえ手を引けば、大韓民国を接収することなど朝飯前だと考えてきた。大韓民国は米国との同盟がなくても、北韓はもちろん、周辺の強大国である日本や中国の安保上の脅威に、対応できる準備をしてきたか。
現実的に韓米同盟がなければ、大韓民国の生存は、切迫した状態だ。北韓はもちろん、中国の脅威から韓国を護っている韓米同盟の安定的な維持・発展を願うなら、韓国国民と政府は、純粋な防御兵器体系であるTHAADシステム配備に反対し、駐韓米国大使館を包囲するなど、これ以上愚かなまねをしないでほしい。
(韓国海洋戦略研究所 李春根)