3日付の朝鮮新報は、朝鮮の最高首脳部を相手に生物化学物質による国家テロを敢行しようとした一味が摘発されたと報じた。テロリストはCIAと国家情報院が組んで浸透させたもので、朴槿惠時代の国家情報院が、2015年末から暗殺陰謀まで含む「北の指導部除去」作戦を推進したと主張した。朝鮮新報のこの報道は、おそらく朝日新聞(6月26日付)の報道を指すようだが、朝鮮新報はこれを北側の発表とした。
だが、暗殺といえば平壌側だ。彼らこそ、韓国の大統領を暗殺しようとどれほど試みたことか。李承晩大統領は、大統領になる前から共産党の暗殺の対象だった。金日成は、特に朴正熙大統領を除去しようと、特殊部隊や刺客を送った。
1968年1月21日、北の特殊部隊32人が青瓦台を襲撃した事件はあまりにも有名だ。74年8月15日には、大阪の交番から盗んだ拳銃で朴正熙大統領を狙撃して失敗(陸英修・大統領夫人が流れ弾に当たって死去)した文世光事件も世紀の事件だ。全斗煥大統領の場合は、ビルマを国賓訪問中に爆弾テロに遭い、随行員らが大勢死亡した。
これらの犯人はすべて検挙され、自白し、証拠もある。この時に平壌と朝総連は何と言ったか。
金氏王朝は、人民を数えきれないほど処刑してきた。金氏王朝3代の首領が虐殺した人民は、大量餓死を含めて、少なくとも400万人以上にのぼる。虐殺方法も、張成澤などの幹部の公開処刑で見られるように、高射機関銃で遺体の跡形も残さないという残虐さだ。
金日成と金正日が死に、金正恩の運命はどうなるだろうか。おそらく人民の手によって決まるはずだ。今まで首領の暗殺計画がどれほど試みられたかはわからないが、首領に対する徹底した保衛対策は、暗殺の試みがあった反証といえよう。最近脱北した脱北者の証言によると、北では全国どこでも1個大隊以上の兵力が、金正恩の直接・事前許可なしに動いたらクーデターとみなされるという。
朝総連は民団に「第2の6・15時代を開こう」という統一戦線工作を活発化している。最近目立つのは、朝青、留学同、韓青などが中心になっていることだ。朝青がこの活動の中心で、先月も朝青の朝大委員会が開催した芸術公演に、全校生が参加したという。
7月2日、東京都議会選挙で大幅な世代交代がなされ、朝総連が長い間管理してきた親北議員が落選したようだ。だが、なぜ朝大が閉校されるべきか、朝大の存在目的と秘は何か、元朝大副学長の自伝を通じて見てみよう。この連載で何回も紹介した『ある在日朝鮮社会科学者の散策』からまた引用する。
「北朝鮮本国からの博士号授与に、朝鮮総連も追随した。一九八一年九月、私は何人かいる副学長のひとりに昇格した。また総連傘下の社会科学者協会の会長に選出された。普通、社会は肩書で人物を評価するものである。私には在日朝鮮社会学者につけられる最高の肩書がほとんどついた。(中略)一九八一年、大学内に新たに社会科学研究所を設立し、その所長に就任した。実態は主体思想研究所だった。研究所には政治経済学部の教授陣から金哲央、玄源錫、裵真求、徐忠彦らが参加した。他学部や総連の学術団体からも二〇人ほどが選ばれて兼任研究員として参加した。社会科学研究所では定期刊行物として『社会科学研究』(一号~八号)、『研究資料集(朝鮮語版)』を出し、主体思想叢書」と銘打って、一五のテーマで書籍を編纂、出版することを企画した。それは北朝鮮の指導機関の積極的な支援のもとに、金日成総合大学、金亨稷師範大学、教育科学院の第一級の学者の協力によって進められた。列挙すると、韓徳銖著『主体的海外僑胞運動の思想と実践』、李珍珪著『主体的政治論』、南時雨著『主体的芸術論』、金守鎮著『主体的教育論』などが朝鮮総連幹部たちの名を冠して出版された。また、金哲央著『主体的哲学概論』、玄源錫著『主体的人間論』、朴龍著『主体的社会変革論』、金漢文著『主体的美学論』など、研究所メンバーの研究書も出版された。私も『主体的世界観』、『主体思想の理論的基礎』を新たに執筆、刊行した。続けて現代資本主義論、現代政治論、主体の人生観、現代ブルジョア哲学批判の執筆、刊行を企画したが、日の目を見なかった。叢書は日本語版が一一巻、朝鮮語版が七巻、英語版が三巻刊行された。研究出版に必要な諸費用は在日朝鮮商工人たちのカンパで賄った」(『ある在日朝鮮社会科学者の散策』96‐97ページ)(つづく)