「崔順実事態」が激発した大統領弾劾政変が、選挙という手続きを経て一段落した。弾劾政変を主導し、大統領を任期中に追い出した側が権力を掌握。政権交代を超えて体制変革の扉を開いた。
新大統領は就任演説の冒頭、「われわれが作ろうとする新しい大韓民国は、数多くの挫折と敗北にもかかわらず、われわれの先輩の代が一貫して追求した国です。また、多くの犠牲と献身を甘受しながら、若者たちが達成しようとした国です。そういう大韓民国を作るため(中略)大統領としての責任と使命を果たすことを闡明します」と言った。
国民の多くは、突然突き付けられた「新しい大韓民国」に当惑する。文大統領の今までの言動や公約、共に民主党主流の性向などから推測するしかない。文大統領は大韓民国の歴史を積弊と決めつけ、ロウソク精神と民衆革命をもって清算を主張してきた。「新しい大韓民国」が今までの大韓民国でないことは確かだ。「新しい大韓民国」が、北韓住民を奴隷状態から解放する自由統一を志向する国でないこともわかる。
文在寅政府は、安全保障と対外関係でも根本的転換を予告している。大韓民国建国の正統性を認めず、北韓を主敵と言わない大統領は、北韓への圧迫を推進する日米など友邦と国連との摩擦が予想される。
今、私たちは、大韓民国の現実を正しく見ねばならない。旅に発つときは目的地をしっかり定めてからでないと出発できない。見知らぬ道も、目的地がわかっていれば、困難に直面したときも耐えられる。今回の選挙を通じて、多数の韓国国民が知らなかった大韓民国の左傾化の実像が明らかになった。
今回の選挙は、左派が中道とも連携せず、執権に成功した最初の選挙だ。左派候補が得た票は47・25%(文在寅41・08%+沈相奵6・17%)であるのに対し、右派が得た票は30・79%(洪準杓24・03%+劉承旼6・76%)にすぎない。これは一時的な現象ではなく、構造的になってしまったものだ。大韓民国のこの左傾化は「民主化」と呼ばれた第6共和国の30年にわたって進んだものだ。
盧泰愚大統領が1988年、北韓を同伴者、主思派が中心の民族解放人民民主主義革命(NLPDL)勢力を民主化勢力と認め、活動の自由を与えた後、左翼は韓国社会の全分野に拠点を作り、根を下ろした。全教組は、若い世代に左翼的価値や大韓民国の正統性を否定する歴史を教えた。韓国社会では世代間戦争が叫ばれて久しいが、この左翼教育を受けた世代がいつの間にか社会の中枢を掌握した。
韓国は大統領など政府の一部が保守であるだけで、メディアと労組、司法・公安機関など、つまり、社会を構成する巨大組織がほぼ左傾意識を持った世代で占められた。朴大統領が一瞬にしてあっけなく弾劾されたのは、韓国社会の主流が左傾化されていたためだ。
もともと自由民主体制には弱点が多い。ドイツのヒトラーも選挙を通じて権力を掌握した。自由民主体制を否定する勢力に、体制を破壊する自由を与えてはならない。韓国は「従北」にまで自由を破壊する自由を与えた。
韓国は建国以来、保守的国家機関に左派が挑戦してきた。しかし今回は、保守右派が左翼国家権力に挑む格好になった。形こそ選挙だったが、実は左傾化の民衆革命の結果を認めた手順にすぎなかった。
ロウソク示威に参加した人々は、左派が扇動するとおり、努力に比べて自分が正当に待遇されていないと感じていたのかもしれず、朴前大統領に失望しただけだったかもしれない。だが、その選択の結果は、単純な積弊清算に留まらず、体制変更への扉を開くことになった。北より先に、南で急変事態が起きたのだ。
弾劾政変の過程で行われた保守右派の粛清は続くだろう。盧武鉉政権で二回も赦免された李石基は、釈放されるのか。憲法裁が解散させた統進党は復権されるのか。
新政府の政策によって東アジアの安保環境も変わる。南北関係は盧武鉉政権に戻り、北韓解放は遠ざかる。伝統的友邦の日米との関係も悪化する。
国民は今回の選挙結果に承服するのか。内乱陰謀で服役中の李石基と統進党をどう扱うのかなどによって、それは決まるだろう。李石基を釈放するなら、国民はそういう政府を支持せず、断固抵抗する。
国民には憲法を守る義務がある。大統領と政府が自由民主的価値を否定し、憲法に違反すれば、国民には、それを正す権利と義務がある。