弾劾政変以来、世界が韓国の大統領選挙を注視している。今回の選挙は、大韓民国の自由民主体制の運命を決定するだけではく、東アジアの安保構造と秩序に決定的な影響を及ぼすからだ。
今回の選挙では、韓国社会に建国以来蓄積されてきたすべての問題が露呈した。まず、今回の選挙の意味に対する認識そのものにおいて、韓国社会が左右にはっきりと分かれている。
この認識の対立は、世代間の戦争でもある。家庭内も分裂している。この認識差と世代間の対話は、南北対話よりも韓日関係よりも難しい。
「積弊清算」を叫ぶ有力左派候補は「ロウソク精神」で国政を導き、保守を焼きつくすと公言する。その候補は、従北勢力とは対話も協力もできると断言してはばからない。
核ミサイルで大韓民国を脅かす金正恩体制への支援を主張する従北左派は、彼らを批判する国民を「極右保守」と決めつけ、壊滅させなければならないと公言している。彼ら民衆革命を主張する勢力が政権を取ることになれば、韓国で内戦が繰り広げられる状況になる。
南北連邦制を追求した盧武鉉政権は、国連の北韓人権決議案を採決する際、平壌の金正日に賛成すべきか反対すべきかを尋ねたという。当時、大統領秘書室長だった文在寅候補は、自分が大統領になれば、北側に大韓民国の国防予算の50年分に相当する天文学的支援をすると公言している。
到底看過できないのは、法治と経済を破綻させる公約があふれ出ていることだ。有力大統領候補が、政府の構成から南北関係、経済と社会政策に至るまで、憲法を踏みにじる違憲的な公約を平気で打ち出している。これはもはや、ポピュリズムと呼べる水準ですらない。
一方、今韓国が直面している安保危機については、意図的に無視している。もっとも政府のどの関連部門も、高潮している戦争の危機に対して国民を準備させていない。
核シェルターの建設など、国民の生命を保護する緊急の課題について、誰も具体的な公約を提示していない。電気自動車や水素自動車を購入するときは、補助金を支援する政府だが、戦争が勃発すれば、北側が直ちに無差別攻撃で大量に使用すると予想される化学兵器の攻撃から、国民の生命を守る防毒マスクを普及させる計画すら持っていない。政府の関連機関のホームページを見ても、微細粉塵対策はあっても、戦時に国民が生存できるよう、情報を提供しているところは見られない。
平壌側のインターネット空間などを利用した、韓国政治、大統領選挙への介入は、すでに危険なレベルを超えている。これに対処できないと、国内の治安はもちろん、友好国の信頼も失う。
THAAD配置の過程で明らかになったように、従北反国家勢力の勢いに押され、軍事秘密と作戦に関する事項を詳細に公開する大韓民国は、少なくとも安全保障に関する限り、国とはいえない。
弾劾政変事態を管理する過渡体制とはいっても、今の政府は、従北左翼の攻勢を恐れて何もしていない。黄教安・大統領権限代行は、何におもねって国民を保護する基本的責務を放棄しているのか。
政府が安保危機については何もせず、無対策・無責任なら、国民が立ち上がらねばならない。幸いなことに、選挙終盤にフレームが急速に変わっている。従北左派が望む「ロウソク民意」、つまり民衆革命の雰囲気から、自由民主の価値を守ろうとする動きが急激に勢いを得ている。
強力な保守右派の候補が登場し、国家安保と自由民主体制の価値守護を公約した。「弾劾政変」で崩壊し、求心点を失った保守の有権者が結集している。この有権者の自覚と行動が、大韓民国の希望だ。