朝総連衰亡史(33)

金正恩批判と金正男暗殺は首領独裁の弔鐘
日付: 2017年03月15日 21時07分

 どうも金正男暗殺事件は、金氏王朝を終わらせる歴史的なきっかけになりそうだ。おそらく、われわれは間もなく、平壌の絶対王朝が崩れるのを目撃することになる。朝総連社会でも、世の中のことがわかる人なら、同じ結末を予感しているはずだ。
朝鮮中央通信は、マレーシアでの朝鮮公民死亡問題は、彼らの体制を崩すための陰謀策動と主張(3月1日)した。マレーシア政府は、同国に赴任していた姜哲・北韓大使を追放した。大使は6日、出国した。
マレーシア当局は、暗殺が確認された時点で、平壌駐在の大使を召還した。マレーシア政府の措置は当然だ。世のどこに、自国の国際空港で化学兵器を使った暗殺を黙認する国があるだろうか。他国での化学兵器使用は、戦争を宣言したも同然だ。
マレーシア駐在の北韓大使は、平壌の方針に基づく主張や宣伝を繰り返し、「忌避人物」として追放された。金正男暗殺が平壌側にどれほど大きな打撃なのかを物語っている。朝総連も、相変わらず平壌からの指令だけを朝鮮新報に伝えている。朝鮮新報を見れば、そのごちゃ混ぜの紙面を見て失笑を禁じえない。国家保衛部と人民保安部などが人民の息の音一つまでチェックする暴圧体制では、でたらめの記事でも、いかなる捏造も当面は通るかも知れないが、日本社会で暮らす朝総連は全然違う。日本の中でも小さな島に引きこもってその中でのみ配信、読まれる機関紙なら別だが。
金正恩は6日、核弾頭を搭載可能な地対地ミサイルを東に向けて発射した。日本を狙ったミサイルを発射したのは、金正男暗殺に対する国内外の非難を一瞬でも避けるためだ。21世紀に「人民民主主義共和国」を自任する世襲独裁体制の虐殺者が、異母兄を暗殺するということは想像すら難しい。この問題を放置すると、金正恩は自滅だ。
もちろん、平壌の措置はいつも多目的だ。ミサイルを発射することにより、THAAD配置を促進し、THAAD配置を通じて韓中、米中関係の悪化を誘導する思惑だ。平壌の戦略的目標は、今この瞬間は、中国が韓国と密着することを防ぐことだ。THAAD問題は韓米同盟と中華覇権主義が衝突する力の対決だが、対立の炎に油を注ぐ北側の措置は、ミサイル発射で十分なのだ。
金正恩は今、韓国の大統領弾劾政変を楽しめる余裕など全くない。なぜなのか。
今年の新年辞で金正恩が自己批判をしたことをもう一度吟味せねばならない。唯一指導体系、首領独裁は首領の無誤謬が前提だ。民は考える必要もなく、無条件の服従だけが求められる。しかし金正恩は自分の過誤を認めたのだ。もちろん、平壌側が首領の過誤を認めたのは初めてではない。金正日が日本人拉致を認めたのも、要するに首領も過ちを犯すと認めたものだ。
金正恩が自己批判をした背景に、朴大統領の弾劾政変があるという分析が説得力を得ている。朴政権を独裁政権、維新回帰と非難するなら、野蛮さにおいて比較にもならない平壌の暴圧体制は何と言うべきか。特検と弾劾を扇動したのは、北韓住民にも指導者を批判し、弾劾する権利があることを教えているようなものだ。金正恩は、金正男暗殺も自分の過ちと認めねばならない状況に陥るだろう。
平壌側は7日、ミサイル発射が、駐日米軍基地を打撃するための訓練だと発表した。在日米軍を核ミサイルで攻撃すれば、数多くの日本人が死に、当然、朝総連も死ぬ。朝総連は、自分たちに向かって核ミサイルを発射する金正恩に盲従するのか。労働党の在日党である朝総連が労働党本部党に反旗を翻さねば、朝総連は日本当局によって閉鎖され、関係者たちは、北に追放されうる。
今、金正恩の周辺には、特に無謀な者だけが残っているようだ。マレーシア大使の姜哲も追放されてよかった。北の外交官や在外公館が、密輸や不法行為などで駐在国から追放され始めたのは、1970年代からだ。酒とタバコの密輸は基本で、麻薬、偽造ドル紙幣などまで、お金になるものは何でもやった。首領の教えどおりの、パルチザンの伝統だ。忌避人物として追放されることは、党と首領の方針に忠実な証拠だ。
ところが、首領の自己批判によってすべては変わる。つまり、首領への忠誠が首領への裏切りとして断罪されうる。張成澤は処刑され、痕跡はすべて消されたが、将来に復権されるかもしれない。首領の誤謬を信じる勢力によってそうなるかもしれない。これこそつまり、首領独裁の終焉だ。        (つづく)


閉じる