瞻星臺=編集余話

日付: 2017年03月01日 14時07分

 日本最大のレースとなる東京マラソン。11回目を迎えた今大会からコースが一部変更となり、ゴール地点が東京駅前になった▼男子の先頭でゴールテープを切ったのはケニアのキプサングだった。タイムは2時間3分58秒。コース変更によって後半のアップダウンがなくなったことが好記録につながった一因だろう▼日本人選手のトップは井上大仁で、8位と健闘したものの、トップに遅れること約4分半だった。女子はトップのチェプチルチル(ケニア)から7分以上遅れて、藤本彩夏が4位でゴールに飛び込んだ▼日本の長距離界は、世界との差が広がる一方だと叫ばれて久しい。レースディレクターは公式ホームページで、「日本国内最高記録の2時間5分18秒をどうしても東京マラソンで更新して欲しい」と述べている▼コースを平坦にしてまで好記録を出してもらおうという運営の姿勢には、一抹の寂しさも覚える。確かに昨今のマラソンは高速化がトレンドだ。世界6大マラソンに、東京とともに名を連ねている他都市のコースレイアウトも、タイムが出やすくなっているところが多い▼だが、この世に多くのスポーツはあれど、マラソン以上に人生に例えられるものはない。2時間以上に及ぶ過酷なレースは、時に誰かの人生の起伏と一致しよう▼思い出したい古いレースがある。1992年、バルセロナ。黄栄祚と森下広一が、オリンピック優勝をかけてモンジュイックの丘を並走しながら駆け上がった。マラソンにはやはり、坂が似合う。


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