高麗青磁への情熱-82-

求婚(一六)
日付: 2017年02月08日 17時56分

 身振り手振りを見ながら話を作っていく日本人巡査は汗だくだった。だいたいの話がわかると、
「たいしたことじゃないんだから、やめれよ」
巡査が日本人に言った。
 「そうじゃないです」と、日本人は弁明しようとしたが、巡査が男の背を押した。
「うるさいから、やめなさい」
その男は不服そうな表情をしながらも、仕方なくそのまま退散した。
私は再び黄金遊園に入った。梅子が私を見て、にこにこしている。
「どうして知らないふりをしていられるの? あんまりいらいらしたので、あたしが話そうとするのに、そのあたしの口まで塞いじゃうんですもの」
「ぼくは日本語を知ってるけど、知らんふりをしたのさ。もしも一言でも喋ったら、殴られるのがオチだろ? そうなると、言い訳ひとつもできないで、殴られっぱなしだったろうよ。こんなときには、日本語を喋らないに限るよ」
「ところで、こんどはあたしを乗せてくれない?」
「おまえにこれは無理だよ」
「それじゃ、乗れるようにあなたが教えてよ」
「どうしてもって言うなら、こっちへおいで」
彼女は遊動木の上にあがって、私の方をじっと見た。私は彼女の手を握った。
「ぼくの言うとおりにするんだぞ」
「はい、わかりました」
私が遊動木に登って二、三歩行き来すると、一方の端が飛び上がった。瞬間、梅子が怯えて「危ない」と言うや、私に凭れかかってきた。私は転げ落ちながらも、梅子が怪我をしなかったかと気づかった。私は土の上に転んで再び立ち上がれなかった。
「また怪我したの? どうして歩けないの? さあ、あそこに行きましょう」
彼女は私を支えながら椅子に座らせた。
「ちょっと見せて」
彼女は私の靴下を脱がせようとして驚き、
「靴下どころか、こんどは血まで出てるわ……。 あたしのせいでこんなことになって。内心ではきっとあたしのことを怒ってるんでしょう?」
「怒るなんて……。これしきのことは普通さ」
そう言ってみたものの、足が痛くて、思うようには立ちあがれない。
「あら、そんな足でどうして歩けるの? 早く病院に行ってみましょう」
「病院には行かない。あ、歩こうか」
「こんなに立てもしないのに、どうやって?」
「それでも歩いて行くから、安心して人力車でも呼んでくれ」
彼女は人力車を呼んできた。
「明日でも、病院に行ってみてね」
彼女は大通りまで追ってきて、遠ざかる私の人力車をずっと見送ってくれた。


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