朝総連は「労働党の在日党」として日本社会のすべての分野を網羅する工作体系を備えた。対南・対日謀略基地としての任務と活躍は、基本的な政治宣伝を超えて、日本社会と日本人の心と頭脳を掌握する次元で広く展開された。政治、経済、学術、文化、宗教、体育分野など、手が及ばないところはなかった。傘下団体と企業体を見れば、この点が明らかになる。朝総連は自分たちのこの広範な工作を隠さなかった。
平壌の要求に従って対日工作をしてきた朝総連は、韓半島の冷戦の主戦場となった日本で、彼らの優位を確保・維持するものだった。朝総連は日本社会のすべての分野と独特の癒着関係を築いた。過去70年以上、北韓の宣伝物に登場した人たちはみな、朝総連の工作対象だったと見ていいだろう。日本の宗教人たちまでが平壌の独裁者の偶像化に利用された。
東京で平壌の貿易代表部の役割をしたと知られてきた朝日輸出入を例にして見れば、内外の学者たちだけではなく、日本当局まで翻弄された。朝日輸出入側は、平壌側が作ったでたらめな統計や資料を拡散させ、北韓の実状を正確に把握されないようにした。日本当局が管理するシンクタンクなどとの関係を適切に維持することで、日本当局の判断や政策決定にまで巧妙に関与した。
北側の工作の基本は、全体主義独裁体制を最大限利用したものだった。北側が外貨稼ぎのため外部世界からの観光客を受け入れるようになるまでは、北側の招待を受けることが北韓を訪問する唯一の道だった。いかなる目的であっても、訪問には招待(許可)の窓口を掌握している北韓当局の同意と協力が必須だった。単純な便宜提供、あるいは金銭で買収され、北側と関係を結び協力が始まることも少なくなかった。
朝総連の記念図書といわれる『総連主要活動日誌」は、「全世界の自主化の偉業に不滅の貢献を成し遂げられた偉大な金日成主席と金正日将軍さま」という説明の写真から始まる。金日成ら首領たちは偉大であり、その偉大な首領とつながっている自分たちも偉大な存在であるというふうに宣伝している。朝総連は当初、共産党と社会党など理念的連帯を持った人々を利用して工作基盤を拡大させた。初期に最も重視されたのは日本のマスコミ工作だった。
北側の核開発戦略を隠し庇護してきたのは日本の第1野党と進歩派のメディアだった。彼らは北側の弁護人・代理人だった。日本社会の各界の多くの人々が自らの恥辱的な過去を隠せないでいる。北の妙香山にある国際親善展覧館には首領に贈り物を捧げた日本人の記録が永久展示されている。朝総連が工作し、操ってきた日本人に関する資料は、平壌側が公開しただけでも膨大な量だ。
朝総連は日本の左傾政治勢力はもちろん、自民党も効果的に接触し、管理した。かつて自民党本部には、米CIAと朝総連の連絡官室があるという話があったほどだ。
金日成に会うためには、金日成に同調することを求められた。金日成への贈り物を用意するという条件も含まれていた。日本の政治の両軸だった社会主義陣営と自民党内の実力者まで朝総連の手足となった。社会党の歴代委員長と党機関紙は、平壌の要求を忠実に応じた。
今日、日本の安保を脅かす北の核開発に政治的に最も協力したのは、日本の政界とマスコミだ。彼らこそ平壌側と朝総連が要求するとおり行動した。
このような北の「代弁人」を作る工作には、金日成自身が直接乗り出した。共産党員と革命家を標榜する以上、神様の地位である金日成が、非合法工作員に会うことさえあった。工作活動が好きな金正日は当然、多くの工作員にあって直に革命活動を激励した。
「主体思想研究所」の推薦で訪朝した外国人までがある夜、関係者に案内されて金正日に会えたといわれる。世界各地に組織された主体思想研究所のメンバーは、新年になると忠誠の手紙を送り、首領の誕生日などに、招待を受けて訪朝する。平壌側と一度秘密の関係ができると、場合によっては関係が代を経てつながる。平壌の独裁体制を利用する詐欺師も少なくなかったが、北側はそういう失態を認めてはならないため、ほとんどは公にならない。
北側は金日成の偉大さのために、歴史を捏造することなど平気でやる。そのため、日本内にはこの歴史の捏造のため活動する工作員たちがいる。彼らは、首領の神格化の妨害になる史料を専門的に消す仕事をする。(つづく)