「道鏡を皇位に就かせよ」という神託をきっかけに、朝廷が紛糾した宇佐八幡宮神託事件が起きたのが、今から1200以上前、奈良時代のことである。孝謙天皇(称徳天皇)に取り入った僧・道鏡が、皇位に就こうと画策したといわれる▼帝政ロシアの末期、皇后の信任を背景に権勢をふるったラスプーチン。暗殺という最期を迎えたが、翌1917年のロマノフ朝瓦解を引き起こした一因といわれる▼ここのところ韓国を騒がせている女性も「韓国のラスプーチン」というありがたくない名前で呼ばれている。朴槿惠大統領に「助言」を与えていた崔順実氏である▼崔氏自身の信仰はわからないが、父は新興宗教の祖である。現大統領の父の時代から関係はあり、当時の朴正熙大統領は、テロで母を亡くした娘に取り入る彼らに警戒感を抱いていたようだ▼詳しいことは今後の捜査の進展を待たねばなるまい。しかし、韓国に安全保障上の脅威が降りかかろうとしている今、国家の力を総動員して対応を急がなければならない今、あまりにも痛い政治の停滞である▼皮肉にも朴大統領は、自分の後に続く大統領の任期を変えようと、憲法改正に言及したばかりだった。まさかその直後に自分の政治生命が終わりかねない事態が起きるとは思っていなかっただろう▼件の崔氏は調査を受け、集まったメディアの前で「死んで償うほどの罪を犯しました」と泣いた。すべての疑惑について正直に話してほしい。泣きたいのは彼女以外の国民の方である。