求婚(四)
「服脱ぎ? やあ、これはほんとうに面白い賭けだ。点数はどうするんだ?」
「一度負けると、服を一枚脱ぐことにするのよ」
「よしっ」
「あたしが主人ですから、親はあたしよ」
「いいようにしろよ」
やがて、一勝負終わった。私の負だった。
「どう、あなたの負けでしょ?」
「うん、負けた」
「さあ、服を脱いでちょうだい」
「ああ、脱ぐよ」
先ず靴下を脱いだ。まさ子はフフッと笑った。
「あたしに負けて、腹が立つでしょ?」
「何をそんなふうにふざけるんだ。自分は負けないとでも思ってるのか」
「負けるかどうかは、やってみないとわからないわ」
「ああ、そうだとも。とにかくこんどはきっと勝つぞ」
「ほんと?」
「ほんとうだ。嘘なんかつくものか」
「いくらあなたが強がってみせても、負けるのはあなたのほうよ」
「さあ、早くやろう。どっちが負けようと、とにかくやってみよう」
「そうよ」
二回目も、私が負けた。
「強がっていた人は、どなた?」
「……」
「どうしたの? 黙っちゃって。服を脱ぐのが嫌でそうしてるの? それなら、頭を下げて許しを請(こ)うたらどお? お願いしますって」
「こいつ、いつまでもふざけてばかりいて……。そうか、自分は負けないものと思ってるな」
「勝負はやってみないとね。それより、さきに服を脱いで。これは賭けなんですからね」
「心配するな。脱ぐから」
そしてまた下着を脱いだ。あとは、人に見られてはならない部分をサルマタで隠しているだけだ。まさ子は何がそんなに嬉しいのか、にやにや笑っている。
「また、続ける?」
「もちろん。誰が嫌だと言った?」
「そんなことを言って、また負けたらどうするの? こんど負けたらこれまで取ることになるのよ、これを」
と言って、まさ子は私のサルマタの端をつまんで引っぱった。
「こいつめ、ふざけていないでじっとしていろ。こんどこそ勝って鼻の穴をあかしてやる」
「何回やっても負けよ。こんどはあたしが譲って、負けてあげようかしら」