高麗青磁への情熱-70-

日付: 2016年10月19日 00時00分

求婚(四)


 「服脱ぎ? やあ、これはほんとうに面白い賭けだ。点数はどうするんだ?」
「一度負けると、服を一枚脱ぐことにするのよ」
「よしっ」
「あたしが主人ですから、親はあたしよ」
「いいようにしろよ」
やがて、一勝負終わった。私の負だった。
「どう、あなたの負けでしょ?」
「うん、負けた」
「さあ、服を脱いでちょうだい」
「ああ、脱ぐよ」
先ず靴下を脱いだ。まさ子はフフッと笑った。
「あたしに負けて、腹が立つでしょ?」
「何をそんなふうにふざけるんだ。自分は負けないとでも思ってるのか」
「負けるかどうかは、やってみないとわからないわ」
「ああ、そうだとも。とにかくこんどはきっと勝つぞ」
「ほんと?」
「ほんとうだ。嘘なんかつくものか」
「いくらあなたが強がってみせても、負けるのはあなたのほうよ」
「さあ、早くやろう。どっちが負けようと、とにかくやってみよう」
「そうよ」
二回目も、私が負けた。
「強がっていた人は、どなた?」
「……」
「どうしたの? 黙っちゃって。服を脱ぐのが嫌でそうしてるの? それなら、頭を下げて許しを請(こ)うたらどお? お願いしますって」
「こいつ、いつまでもふざけてばかりいて……。そうか、自分は負けないものと思ってるな」
「勝負はやってみないとね。それより、さきに服を脱いで。これは賭けなんですからね」
「心配するな。脱ぐから」
そしてまた下着を脱いだ。あとは、人に見られてはならない部分をサルマタで隠しているだけだ。まさ子は何がそんなに嬉しいのか、にやにや笑っている。
「また、続ける?」
「もちろん。誰が嫌だと言った?」
「そんなことを言って、また負けたらどうするの? こんど負けたらこれまで取ることになるのよ、これを」
と言って、まさ子は私のサルマタの端をつまんで引っぱった。
「こいつめ、ふざけていないでじっとしていろ。こんどこそ勝って鼻の穴をあかしてやる」
「何回やっても負けよ。こんどはあたしが譲って、負けてあげようかしら」


閉じる