高麗青磁への情熱-69-

日付: 2016年10月13日 05時09分

求婚(三)

 「おまえ。またどうして……」
「何を言ってるの。留守番しにきてるのに」
「留守番役はぼくのはずだが……」
「どうして、あたしが留守番しちゃいけないの?」
「おまえがしちゃいけないってことじゃなくて、おまえに頼んでおいて、またどうしてぼくにまで頼むんだ」
 「あたし一人だと恐がるからじゃなくって? 噛みつきはしないけど、ひょっとして化物でも出たらどうするの?」
「ぼくがいると出ないのか?」
「あなたは男だから、出ないんじゃないの?」
「そうか。そうかもな、早く入りな」
私はずっと外に立ったままだった。
「なるほど、そうかこれは仕組んだのか」
「ほんとうに察しがいいわね」
「しかし、策略にはまってしまいやしないか心配だな?」
「そんなばかげた空想はそれくらいにして、さあ、入りなさいってば」
「入るのはいいが、でも、何か食べるものでもあるかな?」
「もちろん、持ってきたわよ」
「何を?」
「これよ」
彼女はいろんな菓子をざあっとひろげた。
「これか?」
「そうじゃないわ。リンゴもあるし、存分に召しあがれ」
リンゴを手に取り、座ぶとんにそれをこすりつけ、手で半分に割り、種だけ残して皮のまま口の中へ放り込んだ。あっという間にリンゴを三個食べ、こんどはカステラ三個を、やはり瞬く間に平らげた。さらにカステラをつまむと、まさ子が笑いながら私を見上げた。
「ねえ、あなた。豚年(亥年)じゃなくて?」
「何だと、こいつ。豚年?」
まさ子はこれには言葉を返さず、ホホと笑うばかりだった。
「退屈ね。何かしましょう」
「花札、ある?」
「ええ、ありますよ」
まさ子が立ち上がって花札を出した。二人で花札遊びを始めた。
「何か賭けましょうよ」
「そうだな。何を賭ける? 負けたほうが菓子を買いに行くことにするか?」
「お菓子を?」
「そうだ」
「お菓子はこんなに沢山あるのに、どうして?」
「じゃ、どうする?」
「服脱ぎをやりましょ」


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