北韓が9日、5回目の核実験を行った。今年1月に「水爆実験に成功した」と発表してから8カ月後のことだ。国連や各国の制裁を受けているさなかの強行だった。各国の地震観測の結果、爆発の威力は過去最大規模だったという。
|
韓国の保守系団体「オボイ連合」のメンバーは10日、ソウル市内で、北韓の核実験を糾弾。金正恩の顔写真などを燃やした(連合ニュース) |
朝鮮中央通信は今回の実験が、核弾頭の性能をチェックするためのものであったと発表。弾道ミサイルに核弾頭を搭載可能である点も強調した。北韓はすなわち、核弾頭の大量生産体制を構築したといえる。
北韓はこれまで、核と長距離弾道ミサイルの発射実験をセットで行ってきた。今回の実験前は、中距離弾道ミサイルやSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の発射を繰り返した。北の核ミサイルの実戦配備は、もはや秒読み段階といえる。
国連安保理は核実験の直後の10日(日本時間)、緊急会合を招集し、その日のうちに糾弾声明を出した。声明によると、今後は3月に採択された制裁決議の追加策が議論されることになる。
朴槿惠大統領は、「権力を維持するために周辺国の忠告に耳を貸さない金正恩の精神状態は制御不能とみなければならない」と痛烈に批判。日米と協力しながら対北圧力を強めていく方針を固めた。
韓国の多くの専門家は、北側の核体系の完成を認めた上で対策を取るよう政府に求めている。政府と軍の無為無策に対する世論の叱咤を受けた合同参謀本部は、北首脳部への反撃を軸とした韓国型の大規模報復措置を取ると発表した。だが専門家たちは、核兵器への対応は核兵器でのみ可能だと現実を指摘。世論調査では過半数の市民が韓国の独自核武装に賛成している。
国連の舞台で展開される対北制裁の主導権争いは、いつものように韓日米と中露の構図で展開されている。安保理はさらなる制裁強化を話し合うことになるが、韓米のTHAAD配備に反対した中国は、金正恩の暴走によって面子をつぶされ、国連憲章41条(非軍事的強制措置=経済制裁)の適用に同意していると伝えられている。
韓国の呉俊・国連大使は、北韓の挑発を止められなければ周辺地域は脅威にさらされ続けると危機感を表明。「多くの選択肢が残されていないのは誰にでもわかる」と述べ、3月に採択された国連安保理の制裁決議を強化すべきとの考えを明らかにした。日本の別所浩郎大使も、新しい措置を盛り込んだ決議の採択を目指すと述べた。米国も、ケリー国務長官が制裁の強化が不可欠であるとの立場を示すなど、国連の場でより強い制裁を加えるように働きかける方針を打ち出した。
中国は、核実験については反対の立場を明確にしながらも、「すべての当事者は互いに挑発したり情勢を悪化させたりするいかなる行動も慎むべきだ」(劉結一・国連大使)という慎重論を展開した。核開発には反対するが、刺激はするなといういつもの論調だ。
中国は、自らが議長国を務める6カ国協議の活用についても言及しており、あくまでも話し合いでの解決を主張している。ロシアのラブロフ外相も、緊張を高める行動を控えるべきだと訴えた。
中露が対北制裁に消極的なのを受け、米国は韓日と独自制裁の強化という手段を検討している。米国務省のソン・キム北韓担当特別代表は11日、外務省の金杉憲治アジア大洋州局長と外務省で会談した。両者は独自の制裁案についても含みを持たせた。
次の実験も間近か 韓国国防部が警戒
9日に核実験を行った北韓が、6回目の核実験を行う準備を整えているとの見方が出ている。韓国国防部の韓民求長官が9日、国会で新たな実験の可能性に言及。国防部は警戒と監視を強化していく考えを明らかにした。
国防部によると、実験が行われた豊渓里には3つの坑道がある。1回目の核実験は1番坑道、その後の核実験は2番坑道で行われたとの見方を示した上で、6回目の実験で新たな3番坑道が使われる可能性があると述べた。国防部の分析では、実験の準備は整っているという。
<関係国の反応は>
韓国「金正恩の精神状態は統制不能」
朴槿惠大統領は核実験強行の一報を受け、外遊先のラオスから急遽帰国した。帰国後の会議では「金正恩の精神状態は統制不能」と、異例の呼び捨てで非難した。軍に対しては追加の挑発に備えて非常事態と同レベルの警戒態勢を敷くよう求めた。
韓国は独自に、複数の北の団体・個人の金融取引を禁じるなどの措置をとっている。朴大統領は、当面は国連安保理でより強力な制裁決議の採択を目指すよう指示した。
日本「追加の対北制裁を準備」
北韓の核実験実施の可能性を聞いた安倍晋三首相は「断じて許容できない。強く抗議しなければならない」と述べた。安倍首相は国家安全保障会議(NSC)を開き、情報の収集・分析、的確な情報周知、周辺国との連携を指示した。
菅義偉官房長官は11日、安倍首相から対北制裁を準備するよう指示があったことを明らかにした。日本は現在、総連関係者22人の再入国禁止などを実施している。
米国「軍事的抑止対策に腐心」
米国のオバマ大統領は9日、「地域の安全保障と世界の平和や安定にとって重大な脅威だ」との声明を発表。同時に、核保有国としては認めないとの姿勢を改めて強調した。韓日の首相とも電話で会談し、対北圧力を強めていくことで合意した。
米軍は13日、韓国上空にB1戦略爆撃機を展開した。1月の核実験後と同様の措置だ。また、10月の韓米合同演習に原子力空母を派遣することも決まった。