緊急事態!韓国の対応は

停戦の「一時停止」ボタンが再び押されるとき
日付: 2016年08月15日 08時19分

 休戦。1953年7月27日以来、韓半島で63年以上続く”静止画”だ。しかし今日、大多数の韓国国民は、北韓との交戦がビデオの一時停止状態にすぎないという事実に気づいていないようだ。もし北韓がソウル上空に砲弾を飛ばせば、一般人はどのように対応すべきなのか。そして韓国軍は、即座に統一作戦を展開することができるだろうか。(ソウル=李民晧・高正基)

統一の機会つかめるか 重要なのは国民の意思

 軍事専門家たちは、核で武装した北韓と対峙する韓国は、ネコに追いつめられたネズミの境遇に陥ると警告している。北韓は、すでに運搬体であるスカッド(射程距離300~700キロ)、ノドン(同1300キロ)、ムスダン(同3000~4000キロ)ミサイルを保有し、すぐにでもSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)とICBM(大陸間弾道ミサイル)まで実戦配備することになるだろう。北韓が完全核武装体制を構築するまで、韓国に時間的余裕はほとんどない。長くても2、3年という見通しだ。
言い換えれば、近い将来、韓半島の現状変化、小規模ながらも戦争は避けられないと専門家はいう。北韓内部のクーデターであれ、北韓からの偶発的な軍事挑発であれ、韓半島での有事は、ますます濃厚になっている。8月22日の教訓
今から約1年前、休戦の一時停止ボタンが解除される寸前にまで致る出来事が起きた。北韓が通告した戦争の「Dデー」(作戦開始日)は8月22日だった。北韓軍人民軍総参謀部は8月20日、西海の南北軍事通信回線を介し、韓国に最後通告を行った。
「(南が)8月20日17時から48時間以内に対北心理戦放送を停止し、すべての手段を全面撤去しなければ軍事行動を開始する」
韓国は、緊急態勢に入った。北韓軍の通信文送信直後に、朴槿惠大統領は国家安全保障会議(NSC)常任委員会を招集。「北韓の挑発に断固として対応せよ」と指示した。
金正恩も応酬した。この日の夜、労働党中央軍事委員会の緊急拡大会議を招集した金正恩は、その場で準戦時態勢をとるよう命じ、21日午後5時には「完全武装した戦時状態への移行」を軍に指示した。
実際、北韓軍は動いた。いくつかの砲兵部隊は射撃態勢をとり、東西の海岸の基地にいた潜水艦艇50隻は一瞬にして姿を消した。普段、北韓海軍の潜水艦艇出動は多くても1週間に1、2隻だけだ。北韓軍の特殊部隊要員がDMZに移動する姿も捉えられた。
当時韓国内では、戦争が起きてもやむなしという雰囲気が流れた。しかし、南北は戦争の一歩手前で、板門店での接触を発表。事態は会話モードに変わった。北韓が脅迫した最後通牒時間を2時間後に控えた22日午後3時であった。
韓国からは金寛鎮・青瓦台安保室長と洪容杓・統一部長官が、北韓からは、黄炳瑞と金養建が会談代表として出た。北側は一貫して対北放送用の拡声器の撤去を要求。当時の様子を見ていた韓国側の関係者は「執拗だった」と折り返る。韓国は25日午前2時、北韓の遺憾表明を受ける線で妥協した。
この会談では、政府内で意見が交錯したと伝えられている。国家情報院が妥協に反対の立場を示したのに対し、大統領府は「早期妥結」を注文した。当時、青瓦台秘書室長は李丙琪氏だったが、この李室長が妥結を督促したという話が出回っている。李室長は、中国の戦勝節行事への朴大統領参加日程や、当時猛威を振るっていたMERS(中東呼吸器症候群)による国内景気低迷を考慮し、会談をすぐに終わらせるべきと主張したという。
8・25合意で南は損をした。黄炳瑞が北韓中央放送で「南朝鮮は深刻な教訓を得ることになる」と主張したことで、会談で合意した北韓の遺憾表明は水泡に帰した。むしろ会談を続け、朴大統領の訪中が中止になっていた方がよかったとの見方もある。
挑発した北韓のせいで韓国大統領の訪中が霧散したとなれば、中国は自分たちの行事を、北韓によって台無しにされた形になる。そうなれば中朝関係が悪化するのは自明だ。韓国としては大統領の訪中を懸念していた日米などの友好国に顔が立ったはずだ。
再び到来する北の挑発
韓米連合軍の戦時作戦シナリオは、作戦計画5015である。従来の作戦計画5027は北韓の攻撃を受けた後の対応打撃だったが、5015は、北韓が明白な挑発の兆候を示せば先制攻撃できるという概念だ。つまり北韓が大量のミサイルを発射準備するなどの攻撃の兆候が捕捉されれば、韓米は北韓首脳部と核ミサイル基地を直ちに攻撃し、挑発能力と意志を断つという作戦だ。いわば「金正恩斬首作戦」である。
作戦が開始されると、韓国軍は玄武1、2、3とATACMSミサイル、米海軍はトマホークミサイルなどを北韓のミサイル基地に向かって一斉に発射する。韓米連合特殊部隊は敵陣の中心に投入され、金正恩除去作業とB‐2ステルス爆撃機による北韓首脳部の要塞、核施設、北韓軍のロケット軍司令部の爆撃も行う。
休戦の一時停止ボタンが再度押される瞬間は、近い将来、明日にでも起こりうる。最後の瞬間、北韓もやられてばかりではいられないはずだ。ソウル上空で北韓のミサイルが爆発し、韓国陸海空3軍の統合軍事基地となっている鶏龍台と在韓米軍基地が爆撃されることもありうる。南での人命被害も避けられないだろう。
現在、韓国の最大の悩みは、被害と犠牲を最小限にすることだ。そのため、政府と政策当局者は躊躇している。核兵器だけでも事前に除去できれば、いつでも北韓軍と戦えるという声も聞かれる。
2015年8月22日の最大の教訓は、統一の機会が見えていても政府がそれを逃がす可能性があるということだ。当時は軍全体に、戦う意志を示した20代の兵士が多くいた。また、除隊延長を希望する将兵と、入隊を志願する若者が列をなした。
休戦の一時停止ボタンが再度押される瞬間、ある程度の犠牲は覚悟しなければならない。あちこちで「政府に期待していたら韓国自ら統一のチャンスを逃してしまう」という憂慮の声が聞こえる。統一は、国民の意志が政府に勝てば実現するのかもしれない。


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