瞻星臺=編集余話

日付: 2016年07月13日 12時40分

 韓国に「以熱治熱」という言葉がある。熱をもって熱を治める。暑さも厳しさを増すこれからの時期、冷たいものばかり食べていては内臓を冷やすので、むしろ温かいものを食べなさいという意味で使われる▼なればと鍋料理やラーメンでも食べようかと思うのだが、小欄は大の猫舌ときたものだから困る。調べてみたところ、熱いものを食べる時には舌の先をなるべく当てないようにするのがコツらしい。そうすれば熱さをさほど感じることなくのど元を過ぎてしまうのだとか▼この舌の先、三寸使えば人を言いくるめたりだましたりもできる。先週末の参院選においては、この舌先は徹底して隠された。いわずもがな、改憲の議論である。もはや舌先、口先では丸め込めないと思ったのだろうか、自民党は公約の下の方に改憲を入れた。そのため論戦では語られることが少なかった▼テロ事件や都知事選などが同時進行していた上、18歳まで有権者の年齢が引き下げられたことも、参院選の争点にスポットが当てられなかった理由になるだろう。追い風を受け、改憲勢力は難なく勝利した▼自民党の公約には、憲法改正について平和主義などの堅持や、「国民合意の上」での改正がうたわれている。日本人だけでなく、周辺国の国民も、間違った方向に進まないかと懸念している。「舌の根も乾かぬうちに」ということのないよう、行く末を見守る必要があろう。平和を願う熱をもって、逆行しようとする熱を治める。そう覚悟しなければならなくなった猛暑の夏である。


閉じる