在日の英雄 義士 元心昌23

朴烈との席で〝共産主義をは排撃する統一独立〟
日付: 2016年06月29日 08時31分

李承晩、民団に初めて「単独政府樹立」を言明

ある者は、南北分断の責任を論じるとき、その原因として、外部勢力の介入を最初に挙げる。分断をもたらした決定的場面として李承晩初代大統領の韓国単独政府樹立を指摘する。ここで「もし」という仮説を付け加える。対立していた民族主義者、共産主義者、中道派を結集していれば、同じ民族同士が分裂する悲劇は起こらなかったというのだ。金九は平壌を往来し金日成を説得しようとしたが、李承晩はそのような努力はせず米国側に立ち、本人の権力欲に目がくらんだ偏狭な人物とさげすんでしまう。
会談直後の李承晩初代韓国大統領(写真手前左)と、朴烈初代民団団長(同右)。
しかし8・15の後、米国が李承晩の帰国を故意に阻止したことや、大統領就任後、彼が国益に関するさまざまなことで米国と正面衝突し葛藤したことは、歴史的事実にも関わらず広く知られていない。どのような口実であっても李承晩という人物をさげすむことができない面もある。彼は当代の民族指導者のなかで、国際情勢に誰よりも明るい人物であり、多方面の学識を備えた最高水準の有識者であった。
今日も民団が左派から攻撃される要因としては、李承晩との関係も挙げられる。端緒として大きく二つのことが挙げられる。まず、1948年8月15日、大韓民国政府樹立の翌月である9月8日、李承晩政府が民団を「在日同胞唯一の民主団体で認定」した点。第二に、民団が同年10月4日から5日の全体大会で祖国の国号に従うとして「在日本大韓民国民団」に団体名を変更した点だ。
韓国の歴史が不正当だと考えている人々、主に左派は、民団のこのような決定を李承晩の分断責任論とオーバーラップさせる。在日同胞社会で「左右合作」をうまくやっていたら、韓半島の南北分断のように在日同胞組織が民団と朝総連(当時は朝連)に分かれる不祥事を防ぐことができたという主張である。しかし、多数派を占める朝連は民団を合作の対象とはみなさなかった。当初からともに歩むことができない関係であったという点だけを認識しても、合弁論や統合論が口先だけの理想論であることを悟るようになる。
一方、民団と李承晩の最初の接触は、1946年12月10日、東京の帝国ホテルと記録される。国際連合(UN)総会に出席するためニューヨークに向かっていた李博士(李承晩)は東京に立ち寄り、この日ホテルで民団の朴烈初代団長と面談した。その席で、李博士は、民団側にとって予期できなかった電撃的な宣言をする。初めて韓国での単独政府樹立案を公論化したのだ。
李博士が東京に到着したのは、それよりも先であった。12月5日、帝国ホテルで旅装を解くやいなや、李博士は「在日同胞に告ぐ」というメッセージを発表し、民団にも文書を伝達した。メッセージを注意深く読み通すと、単独政府樹立の必要性に対する伏線が敷かれていることを感知することができる。
「建国途上にある国内において現在最も問題となっているのは、一部の過激分子が北方から連続潜入して善良な民心を扇動しながら平穏な秩序を撹乱させ、殺人・放火などの非行を行い、破壊工作を敢行する悪弊があることだ。(中略)津々浦々の同胞が大同団結して、失われた私たちの国権を回復して、汚質された私たちの信義を高揚することが、私たちの急務である」
北韓地方から南韓に下りてきた共産主義者が民心を扇動し、社会の混乱を煽る工作をしているという内容である。このような趣旨の在日同胞へのメッセージは5日後に朴烈団長に会って水面上に上がってきた。李博士は、まず朴団長に会った経緯を明らかにしたという。「マッカーサー連合軍司令部の要請もあり、民団から在日同胞の実情と意向を聞きたい」という言葉だ。この日、李博士が民団に投げかけたメッセージを口頭で表現するなら、次のような要約になるだろう。
「祖国での『単独政府樹立』が必要です。基本路線は『完全統一独立』、内容面では『共産主義を排撃する統一』でなければなりません」
当時は国内外を問わず「左右合作」が当面の課題として浮上していた。行く先々で合作の話が回っていたと伝えられている。世論は、左右が合作してこそ初めて祖国が「完全統一独立」になると信じていた。
しかし、李承晩博士は左右合作を抽象的な理想にすぎないと判断した。全国民が共産主義者と合作して統一するというのは実現不可能なことだとみた。「自由民主主義」と「共産主義」は、水と油のような関係で合作が不可能であることから、国内外の同胞たちが「共産主義」を排撃し、大同団結して政府を樹立することが現実的な方法だと認識した。たとえ「単独政府」の樹立であっても8・15以降、放置状態に置かれている韓民族の失われた国権、それを一日も早く取り戻す道だと、李承晩は信じていたのだ。    (つづく)


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