朝総連衰亡史(5) 朝青と朝鮮大学校

職業選択の自由も無視し、党組織へ盲従を強いる
日付: 2016年06月29日 00時00分

 朝総連の文献を見ると、傘下組織の序列がわかる。現在の傘下団体の序列は、商工連、朝青、女性同盟、青商会、教職同、教育会などの順のようだ。この序列はもちろん、平壌が決める。商工連は「朝連」時代に留学同に次いで結成されたことからも、その重要性は理解できる。では民青(在日本朝鮮民主青年同盟)と「民愛青」の後身の朝青や1995年になって結成された「青商会」の序列が高いのはなぜか。
先月、朝青と朝鮮大学校に関する興味深い記事が日本のメディアに報道された。朝鮮大学校が2015年度卒業生の中から約30人を朝青に強制的に配置したという。卒業生のうち約30人を朝青に、約50人を朝鮮学校の教員に配置するなど、卒業生の9割を朝総連関連企業などに就職させたとのことだ。朝鮮大学校の学生に対しては朝総連が「進路指導協議会」を通じて卒業生の進路を水面下で調整。この方針に沿って、朝鮮大学校の「進路指導委員会」が本人の希望とは無関係に卒業生を送っているというのだ。
朝総連の人事は、すべて平壌の指示に従う。特に朝鮮大学校は朝鮮労働党が指導する「国立大学」であるため、労働党の規範と指示に従わねばならない。朝鮮大学校は全校生が寮生活をせねばならず、義務的に朝青に加入する。複数の証言によれば、政経学部と教育学部は全員が授業料無料で、卒業前の北韓修学旅行も義務だ。
朝鮮大学校卒業生の強制職場配置は、労働党の制度をこの自由社会の日本にそのまま移植したものだということがわかる。黄長燁元労働党秘書と一緒に亡命した元朝鮮労働党資料研究室の副室長・金徳弘は、党中央委員会に召喚される前に金日成大学の教務部で15年間勤務した。この金徳弘氏が書いた回顧録『私は自由主義者だ』は、北韓の大学入学選抜と卒業生の配置体制を詳細に記述している。
卒業生の職場配置体制は中央と地方の大学で少し違うものの、ほとんど同じだ。中央の大学卒業生の配置は、労働党中央委員会行政幹部部が主管し、地方大学(道級大学)卒業生の配置は、管轄労働党の道党委員会の行政幹部部が主管する。労働党中央委の行政幹部は中央の大学卒業生の中から労働党中央委組織指導部の幹部課が選別した対象者を優先的に配置した後、全中央機関や各分野で必要とする卒業生を選抜して割り当てる。
全中央大学の学生幹部部(卒業生人事課)は、労働党から通告された部門別の需要に応じて適格者を選抜し、身元照会を経て配置案(草案)を作成して労働党中央委行政幹部部へ提出する。行政幹部部は、提出された配置案に準じて卒業生一人ひとりの履歴書と住民登録文書に対する現地確認を行ってから、担当秘書(党中央委の行政幹部部)の批准を受けて、該当の大学に通達する。
配置職場を通報された卒業生は、当日か翌日に配置職場の幹部部(もしくは幹部課)に中央党派遣状(別名・配置状)を提出すれば、最終的に自分の働く部門と職責が与えられる。
大学卒業生の幹部履歴文書と軍事移動証書(予備役証書)、党員移動証書、社労青移動証書、食料停止証明書(食糧配給証書)は配置職場へ機密文書として送られる。(つづく)


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