ある弁護士団体と脱北者団体が争っている。渦中にいるのは、今年4月に中国にある北韓レストランから逃れ、韓国入りした12人の女性だ。12人を法廷に召喚しようとした弁護士らの主張とは…。
従北「民主社会のための弁護士の集い」 VS 安保当局・メディア・脱北者団体
ことの発端は5月24日。韓国の左翼弁護士団体「民主社会のための弁護士の集い」(民弁)が、12人の女性に対して「本人の意思で韓国入りしたのか疑わしい」として、ソウル中央地裁に人身保護救済審査請求を行った。この救済措置は、本人の意思に反して拘禁されている人などを救出することを目的に挙げた。民弁は女性らが国家情報院(国情院)によって拉致された可能性があると主張している。
民弁は請求に際して北韓に住む女性の家族から委任状を受理。その際に協力したのは、中国や米国に住む親北派の人物だったという。こうして21日には女性12人を法廷に召喚して事実関係の確認が行われることとなった。
韓国国内では民弁に対し「脱北者の身分が明らかになることによって、本人のみならず家族に危害が及ぶ」との批判が巻き起こった。大手メディアも社説で扱うなど、おおむね民弁の不当さを指摘した。
現在国情院が運営する施設にいる12人も同様の理由で出廷を拒否し、地裁の判事も本人を召還せずに審理を終えると発表した。民弁側はこの決定を不服であるとして地裁に忌避申請を行い、地裁は12人を再召喚するかどうか検討することになった。
一連の民弁の動きに対して韓国の21の脱北者団体は23日「元従業員に対する生存権侵害だ」と非難し、民弁をソウル中央地検に告発した。脱北者団体は告発状で「民弁は韓国の国家機関やその関連者の活動に対しては無条件に極度の疑いを持つ一方、北の当局が介入した行為に対しては少しの疑いも提起しないという、偏向的で矛盾した行動を見せている」と非難した。
民弁は、すでに脱北者が誰か北当局は把握していると主張し、法定での発言は家族に影響しないとの立場を貫いている。一方、ある脱北者の男性は「外貨稼ぎのために海外のレストランで働く女性たちは、『成分』がいいはずだが、彼女らの発言によって家族の扱いは相当変わってくる。すでに彼女たちの言動はマークされているはず。本人のためにも家族のためにも放っておいてほしい」と話している。