韓国の民間資金が注入された北韓の理工系大学に、対南サイバーテロなどの要員が養成されているという疑惑がまたも持ち上がった。事実だとすれば由々しき事態だが、韓国政府は「疑惑を鋭意注視している」と述べるにとどまっている。疑惑の舞台となっている大学と、そこに支援を行っている韓国の親北団体とは…。
財源不足で新学部延期
疑惑の舞台となっているのは、平壌科学技術大学だ。2001年に設立の構想があったものの、資金難で開校が2010年にずれ込み、近年ようやく卒業生を輩出しはじめた新設校だ。
同校は北韓初の「私立大学」としても知られる。韓国の東北アジア教育文化協力財団が民間からの寄付を集めて北韓当局と共同で設立した。金大中政権時に韓国側からの支援が決まったことから「南北和解と平和の象徴」などともてはやされた。
新設校でありながら、就職の実績は抜きんでている。学部の卒業生はほとんど大学院に進み、大学院での課程を終えると大半は国家機関に就職する。授業が英語で行われるため卒業生の語学力が高く、コンピューターなどの専門性を身につけた人材だからという理由だけではない。むしろ、国家機関への人材供給を目的としているためだと指摘されている。
問題は、卒業生が核開発やサイバーテロに携わっているという疑惑である。この指摘に対して大学運営に携わる東北アジア教育文化協力財団は、IT技術を学んだ卒業生のほとんどは、教員や外国人相手の機関に就職していると説明する。だが、サイバーテロを行う機関に配置されているのは”公然の秘密”だ。北韓当局はそれを認めていないが、透明性や信頼性の確保などはできていない。
韓国外交部の趙俊赫報道官は、一部韓国メディアで平壌科技大に関する疑惑が浮上していることについて、「疑惑を鋭意注視している」と述べた。ただ、透明性の確保について大学関係者は「南北が対立した状況で卒業生の進路を公開するのは難しい」と平然と答えている。
大学の運営は、国連制裁などにより厳しくなっているといわれる。今年9月に予定されていた薬学部の設立が延期になったと報じられている。実験に用いる設備の購入費用の送金が、制裁の影響で遅れているからだという。
学校運営に必要な資金の調達にも支障が出ているという。関係者によると、平壌科技大の運営には毎月10万ドルかかるという。しかし現在は5万ドルしか確保できない状態が続いているという。