米財務省は1日、北韓を「マネーロンダリング(資金洗浄)の主要懸念先」に指定したと発表した。米愛国者法に基づく決定で、手続きが終われば北韓は米国の金融機関との取引ができなくなる。第三国を経由した取引も禁じられ、北韓は国際金融システムから排除されることになった。韓国はこの決定を支持。一方、中国は反発している。
米財務省が制裁を下すとの方針を定めた理由は、北韓の金融機関が核やミサイルの開発資金を調達するため、資金洗浄を含む不正な金融取引をしていると判断されたためだ。財務省の決定により、米国内の企業・個人は、金融機関を通じた北韓との取引ができなくなる。
だが、それだけでは大きな意味をなさない。注目すべきは、「セカンダリー・ボイコット」、つまり第三国の機関を経由した金融取引まで禁止となることだ。
過去に多くの対北制裁は実行されてきたが、最も北韓政権にダメージを与えたものの一つが、2005年のバンコ・デルタ・アジア(BDA)に対する米財務省の制裁だといわれる。米財務省は当時も、北韓の資金洗浄に関わった疑いがあるとして、国内の金融機関にBDAとの取引を禁じた。
その結果、米国との取引が停止するのを恐れた国内外の企業が、BDAとの取引を中止する例が相次いだ。BDA側は同行内の北韓関連の口座を凍結。こうして当時の金正日はBDAを通じた外貨取引に大きな支障をきたした。
今回の制裁は、北韓そのものが対象になっている。マカオの一金融機関であるBDAとは規模が異なる。
専門家は「国連制裁以上に効果がある」と断言する。国連制裁は、どれほど厳格に履行するかの温度差が各国でまちまちだ。しかし財務省の制裁では、第三国でも北韓との取引を行えば、それが発覚した場合には米国の金融機関との取引ができなくなる。米国の取引を取るか、北韓との取引を生かすか、多くが前者を選択するのは明らかだ。
北韓は現在、既存の制裁によって米国の金融機関との取引が行えなくなっている。今回は事実上、第三国を経由したドルの流れを遮断するものとなるだろう。これは、北韓が国際金融システムから排除されることを意味する。
米財務省がBDAへの制裁から10年以上たって今回の方針に至ったのは、その間に北韓が核ミサイル開発をやめず、資金洗浄も続けていたからだといわれる。米議会は2月に対北制裁法を制定しているが、その後の調査の結果として今回の資金洗浄対象国指定に至った。
韓国はこの決定を歓迎している。外交部の報道官は2日、「安保理制裁決議を忠実に履行し、さらに独自制裁も科していく断固たる意思が反映されている」と評価。また、BDAへの制裁との比較で「(今回の制裁の方が)広範囲の効果が期待できる」と述べた。
一方、北韓の最大の貿易相手である中国は、「一方的な制裁には反対」との姿勢を示している。6、7日の米中戦略経済対話を前にした牽制とも受け取っているだろう。米国には北韓の「代理口座」ともいえる中国系銀行の口座が多数あるとされる。こちらへの影響も避けられない状況だ。