北韓が韓国に向けて飛ばしたとみられる「宣伝ビラ」が、韓国国内で相次いで発見されている。朴槿惠大統領を非難し、北韓の核開発を称賛する内容が多くを占める。
ビラは朝鮮労働党大会を前後に急激に増えているという。韓国を揺さぶる心理戦の一環とみられるが、韓国市民の反応は冷ややか。むしろ北韓の滑稽さが改めて注目される結果になっている。
北韓で36年ぶりに党大会が開会した6日、ソウル市や同市の北西に隣接する京畿道高陽市で、韓国の政権を非難し北韓を賞賛するビラが複数見つかった。翌7日にはソウル市西部にある陽川区の路上で同様のビラが発見された。いずれも北韓から風船を使って飛ばされたと推定されている。
今年初めには高陽市内で宣伝用のビラ約1万5000枚とCD18枚が発見されたほか、ソウル南方の水原市でもビラ約6万枚が見つかった。ソウルの東郊外にある南楊州市の大学付近で、ビラ約1万枚とCD約10枚が回収されている。4月には日本人観光客なども多く訪れるソウル市内の東大門で大量の宣伝ビラが見つかった。
北韓が散布したビラ数の正確な統計はないが、警察関係者によると、今年だけで1000万枚に達するとみられている。気になるのは、最近住宅街で少量のビラが発見されていることだ。何者かがビラを国内で印刷し、散布している可能性も指摘されている。
北韓は「宣伝工作」を目的として懸命にビラを散布している。朴政権を批判し、北の優位性を誇張する内容などだが、思わず眉をひそめてしまうような低俗な表現や絵が盛り込まれているため、むしろ逆効果をもたらしている。
「あんな内容を信じる韓国国民は今時いないだろう」と、ある警察関係者は指摘する。
実際にビラを発見した市民がSNS(交流サイト)などに掲載した書き込みをみると、「あきれて言葉が出ない」、「あんなことに金を使うなら、住民にいいものを食わせてやればいいのに」などの意見が大半だ。
韓国側も北韓の核実験や長距離弾道ミサイルの発射実験など相次ぐ挑発に対する報復措置として、政府が対北拡声器放送を再開したほか、民間団体もビラ散布など、宣伝攻勢を強めている。
ここ最近発見されている北韓からのビラが、韓国の攻勢に対抗したものかどうかは不明だ。ただ、北韓の狙い通りの効果は全く出ておらず、嘲笑の対象になっているのは確かのようだ。