日本人女性、まさ子(一一)
「そういうことなら、躊躇うことないわ。それで、今どこにいるの?」
「うちの工場にいます」
「工場に?」
「はい」
「はて、誰かしら?」
叔母は首を傾げながら暫く考え込んだ。
「他でもありません。彫刻をやっている柳さんですよ」
「柳さんていうと、朝鮮の男なの?」
「はい、そうです」
「この人ったら、他に男がいないわけじゃあるまいし、よりによって朝鮮の男を……」
「チョーセンジンだと寂しく思われるかもしれませんが、この人は日本人一〇人にも代えられない立派な男です。前にも見かけたことがあると思いますけど、もう一度会ってみて下さい」
「会おうが会うまいが、チョーセンジンでしょ。何回見たって人間が変わってくるとでも言うの?」
「そうです。この前は何気なくご覧になりましたけど、今度はしっかりと見てほしいのです。この人は健康な体で美男なうえ、印象もよく、才能もあるんです。そのうえ、信義に厚く、責任感も強いし、不屈の精神の持ち主で競争心旺盛で、人に負かされることがありません。それに正義感と決断心が強く、
何であれいったん心に決めたことはどんな難関と逆境の中でも、必ずやり遂げるんです。逆に、一度やらないと言ったら、お金をいくら積んでも一歩も引かない、正直者ですよ。これ以上の男がどこにいます。これほどの男はたぶん二度とお目にかかれないと思います。後悔しないようによく考えて下さい」
甥の話を最後まで聞いていた叔母は、あれこれお思いあぐねた末、
「それじゃ一度行って会ってみますか」
「それがいいですよ。ぼくの言うことが嘘かどうか、一度確かめて下さい」
「あたしがあんたの言うことを信じないんじゃないのよ。ともかく、明日出かけてみましょう」
まさ子の母は次の日から連日三日間工場通いをした。彼女は私と話もし、彫刻についての質問もし、ときに私の彫刻した物を手にして眺めたりした。
主人は再び叔母を訪ねた。
「人柄はどうですか?」
「言うことなしね。おまえの言うとおり立派な人ね。先ず言うことなすことが端正だし、体は健康そうだし、印象もいいわ。私が気に入ったんだから、きっとまさ子も気に入ると思うの。でも、朝鮮の男は早婚だから、もう結婚しているかもしれないわね」
「何を言うんですか。その点はぼくがよく知ってますから安心なさいよ」
「それなら、別のところから話が持ちあがる前に、うちが先に話をもって行ったらどうかしら」
柳根瀅
高徹 訳
馬瑞枝 画