金正恩を党の「首位」に推戴した朝鮮労働党の第7次党大会が、平壌で行われた。決して核を放棄しない姿勢を改めて強調した。韓国に対話を呼びかける一面もあったが、矛盾だらけのずさんなプロパガンダ攻勢だった。36年ぶりの開催だが、その間の成果がなかったことが浮き彫りになった。
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金正恩に祝賀文と旗を捧げる総連代表団(6日、平壌4・25文化会館) |
「北韓の核兵器の小型化技術が相当な水準に到達したと判断される」
韓国軍合同参謀本部の関係者は9日、国防部の定例会見で記者団を前にこう述べた。具体的な内容は公開されなかったが、北韓がミサイルに核兵器を搭載できるほどの小型化技術を構築したとみられる。一部の外信は、韓米の情報当局は北韓が短距離ミサイルにも搭載可能なレベルの技術を保有していることを知りつつ、「公式化しないだけだ」と伝えた。
金正恩は第7次労働党大会で「責任のある核保有国」に言及し、核と経済の並進を恒久的な戦略路線と宣言した。韓国政府当局者は、北韓が核保有を前提に外交を展開することを宣言したものと解釈している。
金正恩は「軍事会談の提案」にも言及したが、韓国政府は金正恩の発言を宣伝としてみている。実際に統一部と国防部は9日に会見を開き、「誠実さがない」と一蹴している。
「対話の門は開いている。だが、対話が成立するためには北韓が挑発を中断し、非核化の意志を行動でまず見せるべきだ」
韓国政府の立場は、北韓が具体的かつ誠実な非核化の行動を見せない限り、対話のテーブルにつくことはないというものだ。
国防部は今後の挑発の可能性に対して「核ミサイルの完成度を高めるために、追加の核実験とミサイル実験発射を持続する」と見通した。核実験の可能性に対しては「特異な動きは見せていないが、すべての準備を整えている」(統一部代弁人)と見ている。
<解説>
今回の党大会案件には、予想どおり金正恩を労働党の首位に推戴する案件が含まれた。つまり、3代世襲独裁の「戴冠式」を行うことを意味する。北韓憲法の第11条は「朝鮮民主主義人民共和国は朝鮮労働党の領導のもとにすべての活動を行う」と規定しているが、労働党は首領が支配する体制だ。金正恩は父・金正日の先軍政治を党支配体制へと正式に復元させるとともに、自分の統治体制を強化するため、これから党の世代交代を推進するはずだ。
金正恩は2日間にかけて党中央委員会の総括報告を行った。総括報告は、(1)主体思想と先軍政治の偉大な勝利、(2)社会主義偉業の完成のために、(3)祖国の自主的統一のために、(4)世界の自主化のために、(5)党の強化発展のために、という5つの章で構成された。
金正恩は第1章で、労働党が去る36年間でなし遂げた成果を、最高司令官の唯一的先軍領導体系と先軍革命路線と自衛の軍事路線によって、不敗の軍事強国に強化・発展されたことだと総括した。「首領様のやり方で」領導した結果、首領と党と大衆が一つとなり、「過去数十年間も戦争の砲声が一度も鳴らず、平和で安定した暮らしを享受してきた」のは、先軍革命路線と先軍政治によってできた主体国防工業(核やミサイルなど)のおかげだと強調した。
とんでもない詭弁だ。砲声もなかったのに、なぜ「6・25戦争」の犠牲者よりもはるかに多くの北韓住民が餓死し、住民の体は縮み、寿命が短くなったのか。なぜ脱北住民の数が、6・25戦争の前後に越南してきた人々の数を上回り、今も多くの脱北者が中国で奴隷のような悲惨な状態に置かれているのか。
報告の分量から見れば、暴圧体制の強化を強調した第2章が今大会の総括報告の核心部分だ。金正恩は、党に忠実な革命的武装力である「人民内務軍」が首領保衛、制度保衛、人民保衛の使命と任務を立派に果たしたと賞賛し、「敵対分子の蠢動を萌芽の段階で無慈悲に踏み躙らねばならない」と督励した。
金正恩は「全社会の金日成・金正日主義化は、わが党の最高綱領」と強調し、これは「政治と軍事、経済と文化をはじめとするすべての分野を金日成・金正日主義の要求どおり改造して人民大衆の自主性を完全に実現していくことを意味します」と報告した。物質的・文化的な支配を超えて、人間の感情まで改造することを宣言しているわけだ。
第3章と第4章は、今回の党大会に対する内外の関心と、公開される「総括報告」が及ぼす影響やプロパガンダ効果を考慮した欺瞞にすぎない。第3章は、対南戦術・戦略や工作指針を総合したものだ。金正恩は「7・4(共同声明)、6・15(共同宣言)、10・4(共同声明)は、誰にも一方的に否定したり無視する権利はない」と強弁した。そして「南朝鮮当局が千万不当な『制度統一』にこだわれば、我々は正義の統一大戦を通じて反統一勢力を無慈悲に一掃する」と宣言している。
しかし、南北間のすべての「合意」の破棄を何度も宣言したのは金正恩自身である。特に南北間の「韓半島の非核化合意」を白紙化し、憲法にまで核保有国であることを明示し、米国を攻撃できる核ミサイルの実戦配備を自慢しているのも金正恩時代になってからのことだ。
国際情勢と国際関係に言及した第4章で金正恩は、米国を「世界の自主化偉業」の主打撃対象であると明示した。そして、「自主の強国、核保有国の地位にふさわしく対外関係の発展において新しい章を開いていかなければなりません」、「核武力を質的・量的にさらに強化していく」と宣言している。党大会総括報告の対南・対外関係の内容は扇動と詐欺策である。
第5章で金正恩は「わが党は、党の組織的団結を破壊し、党中央の唯一的領導に挑戦する行為と要素らに反対して非妥協的な闘争を展開しました」と述べ、党の団結はさらに強固になったと評価した。一方、「働き手たちの中で見られる勢道と官僚主義、不正腐敗行為との闘争を、それが根こそぎ一掃されるまで根強く続けて強度を強めて展開せねばなりません」、「金日成・金正日主義とその具現である党の政策のほかにはいかなる思想も絶対に割り込めないようにしなければなりません」と、引き続き容赦のない粛清を予告している。
党大会の中央委総括報告の核心は核保有国としての地位を放棄しないということと、金日成・金正日主義を堅持することに要約される。だが、総括報告は一見するだけで扇動に終始したものであることがわかる。総括報告の第1・2・5章の主張と、第3・4章の内容、つまり、全社会の金日成・金正日主義化および唯一領導体系と、民族大団結に言及した「祖国統一の原則」などは到底調和・共存できない矛盾を抱えている。金正恩は労働党を通してすべてのことを企画し、推進・監督していくと誓っているが、暴力と洗脳に基づいた「唯一指導体系」では食糧配給体制すら維持できなかった。
大韓民国は法治国家、北韓は全体主義世襲独裁体制だ。南北韓が文明国に統一されるためには、まず国家の上に「君臨」する朝鮮労働党が解体されねばならない。統一とは結論的に朝鮮労働党の解体だ。今回の党大会を通じて朝鮮労働党を解体するのに有用な、その実態と端緒が把握されたといえるのではないか。
(洪熒・本紙論説主幹)