中国にあった北韓の飲食店から従業員13人が集団で亡命した事件を受け、中国内にいる北韓の留学生や政府幹部に続々と帰国命令が下っているという。集団での逃亡を恐れての措置とみられている。
帰国命令が下ったのは、13人の韓国入りが報じられた数日後の4月13日ごろからだという。中国東北部にある大学関係者の話として伝えた自由アジア放送(RFA)によると、学生のほとんどは中国の貿易会社に勤務する駐在員の子だと推定される。
脱北者によると、駐在員の子弟が外国に留学するのは珍しい。「大使館や領事館職員など、基本的に集団生活で監視しやすい職種の人なら家族を連れて海外勤務をすることは可能だが、貿易会社の人はほとんど単身赴任と聞いている」とのことだ。本国の家族を”人質”にするのである。
ただ、留学生であってもある程度の集団行動が求められるという。一つの授業を複数の北韓留学生が履修するのが基本となっており、教室外で北韓以外の国の学生と言葉を交わすこともほとんどない。特に同じ学校に韓国人留学生がいた場合、彼らを徹底して避ける傾向にあるという。
RFAは関係者の話として、留学には当分の間、厳しい制限が加わるとの見方を示した。一方で留学の制限は、脱北が問題になるたびに繰り返されてきたことだとも紹介している。
本国に召還されているのは学生だけではない。公館員を筆頭に、海外にいる党の高官らに対して帰国命令が出ているという。RFAによると、5月の党大会を前にした核心幹部の世代交代のため、大使クラスも例外でないようだ。
海外、特にヨーロッパ勤務者の間では、「絶対に帰国してはならない」という話が出ているという。帰国後に親族が粛清された場合、自分にも累が及ぶためだ。とはいえ本国からの命令を無視することは許されない。そのため帰国延期のための工作や、帰国後に粛清されそうになった際に備えた”脱出ルート作り”に余念がないという。
仮に海外にとどまり続けることができても苦労はなくならない。北韓は資金難のため、外国公館とて支援を受けられる状態になく、厳しい外貨稼ぎのノルマが加わる。外貨を集めても、国連制裁のため送金できないともいう。